テーマ : 新型コロナ・静岡

コロナ後遺症患者なお多く 生活困難 症状多様 特効薬なく

 新型コロナウイルスの後遺症に悩む人は、5類移行から1年たつ今も多い。症状は多様だが、中には激しい疲労感や脱力感に襲われて、長きにわたり日常生活が困難になる人も少なくない。国内外で研究が進み、病原体から体を守る免疫の異常が関係するとの指摘もある。だが発症メカニズムに謎は多く、特効薬もない状況が続いている。

新型コロナ感染後の免疫の乱れのイメージ
新型コロナ感染後の免疫の乱れのイメージ


 未明まで
 4月16日午後11時、渋谷駅周辺では缶ビールを手に談笑する若者が目立つ。駅近くで「コロナ後遺症外来」を掲げるクリニックの平畑光一院長(46)は、人けのなくなった院内でスマートフォン越しに患者と向き合った。外来予約は3カ月以上先まで埋まり、夜間に受け付けるオンライン診療は午前4時まで続く日もある。「5類後も患者はあふれかえっている」と現場の深刻さを訴える。
 コロナ後遺症について世界保健機関(WHO)は、感染後3カ月以上経過して、なお疲労感や息切れ、認知機能低下など多様な症状が2カ月以上続き、ほかの病気の診断が当てはまらない場合と定義する。感染者の10~20%で発症し、これまで200種類以上もの症状が報告されている。

 免疫
 平畑氏のクリニックでは今年に入って感染し、後遺症で寝たきりの状態になった患者もいる。症状の類似性が指摘されているのが「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)」だ。簡単な家事をした後にベッドから起き上がれなくなるなど、身体的な負荷をかけると極端に体力を消耗するのが特徴。免疫が自律神経系を攻撃して炎症を起こすのが原因の一つと考えられている。
 京都大の上野英樹教授(ヒト免疫学)は免疫細胞の一種「ヘルパーT細胞」に着目する。免疫反応を促して病原体を排除したり、反応を抑えて過剰な攻撃を防いだりする免疫の司令塔だ。
 後遺症との関連を調べるため患者血液を分析すると、動悸(どうき)や呼吸困難の症状がある女性グループは、免疫反応を促進するヘルパーT細胞が過剰にあり、倦怠(けんたい)感や頭にもやがかかったようなブレインフォグの症状がある男性グループは、反応を抑制するヘルパーT細胞が少なくなっていた。

 複数の原因
 上野教授はこの現象を「免疫の乱れ」と指摘。体内に残るウイルスの断片が促進と抑制のバランスを崩し、炎症を起こし続けていると考える。年内にも患者でない人との血液成分の違いを新たに調べる予定で、クラウドファンディングで研究費を募る。
 これまでの国内外の研究では、自己免疫反応やウイルス断片の炎症のほか、感染症で炎症を起こした臓器の機能障害、体内に潜伏していた別のウイルスの活性化などが原因と指摘されている。複数混在するとの見方が多く、全容解明には時間がかかりそうだ。
 「全国コロナ後遺症患者と家族の会」代表の40代女性は「まだ記憶障害に悩んでいる。後遺症患者が訪問診療などの医療福祉サービスをもっと利用できるようにしてほしい」と要望している。

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