普通じゃない「並盛」 コスパばっちり◎ 洋食屋「COFFEE&PIZZA ピエール」(藤枝市)【記者さんぽ|個店めぐり】

 「とにかくボリュームがすごい」「コストパフォーマンスが良い」。インターネット上ではそんな口コミを数多く目にします。今回の【記者さんぽ|個店めぐり】は藤枝市横内の洋食屋「COFFEE&PIZZA ピエール」にぶらり。実はこのお店、私(記者)の父が学生時代からお気に入りのお店。私も父に連れられて、何度も訪ねていますが、口コミに全く同感です。なぜ、こんな大盤振る舞いに至ったのか、店主はどんな方なのか、疑問を解決するために訪ねました。

人気メニュー「ハンバーグピラフ『並盛』」
人気メニュー「ハンバーグピラフ『並盛』」

 JR西焼津駅から車で約15分、旧国道1号の仮宿東交差点のすぐ前。黄色い建物の店先には数種類の草花が並び、かわいらしい外観です。中に入ると、80年代の音楽や椅子、壁紙などいたるところにレトロな雰囲気が広がります。店主の伊藤武さん(66)が元気な声で迎え入れてくれました。

photo02 店主の伊藤武さん
 ピエールは1980年12月に開業。42年目に入ったところです。
 伊藤さんが京都市内の大学に在学中、同市内のレストランでアルバイトを始めたことが、飲食の世界に入るきっかけでした。6年間勤めた、そのレストランに就職することも考えましたが、経営者から自分の店を持つことを勧められたそうです。当時ともに働いていた女性=利恵子さん=と故郷藤枝で店を出すことに決めました。2人は後に結婚し、今に至ります。
 開店当初、周辺には喫茶店が複数立ち並び、激しい競合で経営は容易ではありませんでした。ピエールでは当時、珈琲をメインに、軽食を10品程度用意していましたが、なかなかリピート客をつかめずにいました。時が流れ、周辺にコンビニエンスストアができ始めると、新たな競合として成長。このままではだめだと、業態を食事主体の洋食店に変えることを決意しました。

photo02 100を超えるメニュー表。裏面にも続きます
 近隣ではまだ少なかったランチセットを追加し、メニューは現在形に近い、100を超える品数にまで増やしました。さらに、「うちならではの特徴を持たせたい」と、利恵子さんと相談を重ね、15年ほど前から料理のボリュームを増やし始めたそうです。

 伊藤さんは、スタッフが料理を提供する際、厨房からお客さんの顔を見るのを楽しみにしています。はっと驚いた顔や喜ぶ声、思わずこぼれる笑顔、そんな反応を見るのが「何よりうれしい」と言います。そうした喜びの連鎖に比例するように少しずつ、少しずつボリュームは増えていき、現在の「普通ではない『並盛』」に到達しました。

photo02 自家製のホワイトソース。1週間で5Lタッパー6つ分を消費するそうです
 写真は、プリンではありません。ピエールの一押し、自家製のホワイトソースです。2021年12月現在、月、火曜の週休2日ですが、どちらか1日は丸々、ソースの仕込みに使っているとのこと。ホワイトソースは、4時間ほどかけ、5Lのタッパー6つ分(1週間分)を用意します。もう一つの自慢、デミグラスソースは10日から2週間、じっくり時間をかけて仕込む力の入れようです。

photo02 「ホワイトソースナポリタン」。トロトロなソースが食欲をそそります
 今回、「ホワイトソースナポリタン(860円)」と「ハンバーグピラフ(860円)」をオーダーしました。どちらも並盛で注文しましたが、どちらも「大盛」と間違えたかと思うほどに、ずしんと来る重さです。パスタは、なんと700グラム。白米は2合も使用しているとのこと。道理で重いわけです。
 ホワイトソースナポリタンは少しスパイシーな仕立て。その上にかけたほんのり甘いホワイトソースとの相性が抜群。ハンバーグピラフは、塩味のがきいた2合のピラフの上に200グラムのハンバーグがどん!、上から濃厚なデミグラスソースをたっぷりかけた一品です。
 2品とも、食べても食べても減らない感覚。食べることが大好きな私(記者)ですが、半分も食べられませんでした…。

photo02 「並盛」の量に驚きながらカレーを頬張るお客さん
 平日のお昼時に取材に伺うと、この日は男性のお客さんが多い印象でしたが、女性の姿もちらほら。11時半を過ぎるとお客さんが途切れることなく訪れ、外で待つ人も出始めました。声を掛けてみたところ、50代の男性(焼津市)は20年前からの常連さん、30代の男性(藤枝市)は「学生時代に店を知り、月1回のペースで通っている」とのこと。リピーターが多いことが推測できました。
 来店者の中には「量が多くて美味しい」「メニューの種類が豊富」との声に加えて、「マスターのフライパンさばき」を魅力に挙げる方もいました。伊藤さんは、月に2枚もフライパンを変えるそうです。具材を炒める際に、コンロとぶつかるため、へこんでしまうのが早いのだとか。お店に行かれる方は、ぜひ調理の音にも注目です。

 ピエールにはホームページがなく、一度来たお客さんが誰かに伝えたり、SNSなどの投稿を見たりして来店するケースが多いそうです。一人で心行くまで満腹を味わうもよし、家族や友人と一緒に、何品か頼んでシェアするもよし。伊藤さんは「無理して食べなくていい。美味しくお腹一杯になったら、残った分はテークアウトしたらいい」と教えてくれました。

photo02 ピエール外観
 伊藤さんは「1000円以内で満腹になる食事を提供して、お客さんの満足感が高い店にしたい。体力が続く限り、あと何年かはお店を続けたい」と話していました。

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