記者コラム「清流」 温泉街の“真打ち”

 古典落語の前座噺(ばなし)の一つに「道灌」がある。人間国宝だった故5代目柳家小さんの一門では、入門して最初に教わるのが、この噺。八五郎と隠居、2人の会話だけで成り立つ単純な噺に、落語の要素が詰まっているのが理由らしい。
 演題の由来は、噺に登場する掛け軸に描かれた室町時代の武将、太田道灌。東伊豆町の熱川温泉の開祖とされる人物だ。道灌にちなんで開かれる「石曳(び)き道灌祭り」はコロナ禍を受け、一昨年から仮装をメインに大きく衣替えした。
 前座噺の「道灌」で寄席のトリを取れる真打ちは、真の実力があるとされる。熱川も伊豆の温泉地の「入門編」として敷居を下げつつ、玄人も納得させられるか。変化する古湯熱川の実力やいかに。

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