スポーツのまち磐田の転換点 資産生かし新機軸戦略を【風紋】

 サッカーJ1ジュビロ磐田本拠地の磐田市で2月、多様なスポーツ資産のまちづくりへの生かし方を考えるシンポジウム(市主催)が開かれた。表題は「どうする磐田」。しかし「今ごろ?」と違和感を持ったのが本音だ。20年前のサッカー日韓W杯では市内にベースキャンプを張った日本代表を支え、長年プロサッカー、ラグビーチームが拠点を置く。市出身の卓球五輪金メダリストの存在もある。一連のスポーツレガシーや集客、話題力から、本来は既に先進地であってしかるべきだ。
 課題はこの輝きを放つスポーツ資産が点と点で存在すること。チーム名や有名選手の影響か、民間調査会社が公表した「地域ブランド調査2021」で「スポーツのまち」として想起率が高い市区町村ランキングが全国1位だった。ただ、市全体をスポーツのまちと称するだけの熱気を内側からは肌で感じない。
 日韓W杯に前後して市がスポーツのまちづくりを前面に掲げていた時代はあった。その名を冠した課を置き、全日本高校女子サッカー大会を2004年から10年間連続開催、その過程でスポーツの市民ボランティア組織が立ち上がった。一時は学校の校庭芝生化も先進的に進めた。プロチームの成績やリーマン・ショック後の地域経済停滞に伴う判断も加わったのか機運は後退したが、小学生のジュビロホーム戦一斉観戦事業は続いている。ノウハウの再構築で新たなキックオフができる環境は十分にある。
 再び旗印に掲げるなら、全国でも珍しい10万人台の人口規模の都市に活動拠点を置く複数のプロチームの存在を生かしつつ、シンポでも上がった「尖(とが)った」「大胆な発想」の磐田版戦略が必要になるし本気度も問われる。市の22年度当初予算案では、その決意を“宣言”するようなスポーツ関連事業の打ち出しは無かった。他市に目を転じれば、「フェンシング」に特化して官民で振興活動を推進する沼津市や、大規模に環境整備し、スポーツ誘客などに乗り出す事例もある。
 サッカーのJ1復帰、ラグビーの静岡ブルーレヴズ始動、静岡産業大磐田キャンパスのスポーツ科学部新設など、話題豊富な今が転換点だ。未来を見据えた目標をつくりたい。市民もまちの特性を当たり前に享受せず、自ら参画してほしい。

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