桜ケ丘病院23年度移転 一層の医療機能拡充を【黒潮】

 施設老朽化により、2023年度にJR清水駅東口公園への新築移転が決まっている静岡市清水区の独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)桜ケ丘病院。新施設は津波被害への備えのみならず、医療の機能面においても広域的に核になるよう一層の拡充を目指すべきだ。
 「駿河湾フェリーで通院している人もいる」。元県職員の男性(74)は話す。フェリー乗り場は24年度病院の移転先に近い場所に移る。伊豆西岸の患者にとって新病院は朗報になるかもしれない。
 同病院の経営は実は健全そのものだ。20年度決算は約2億4千万円の黒字。貸借対照表によれば、総資産約19億円3千万円に対し負債は約4億8千万円しかなく、自己資本比率は75%もある。
 本業の医業収益が好調で、企業の人間ドックなどに利用されることが多い。医業収益全体の2割程度を占める保健予防活動収益は、病院経営を下支えしている。移転先でより積極的に検診事業をPRする予定はないが、駅近の利便性から経営陣には期待もあろう。
 旧社会保険病院時代の2006年に整理合理化方針が浮上、地元住民が署名を集めて国に存続要望した経緯がある。清水区は現在も葵区と比べて人口当たりの医師数が数分の1以下にとどまるなど、静岡市内には医療偏在の問題が横たわる。清水区の人口当たりの医師数は全国平均以下だ。
 市は住民団体が“密室劇”と批判する移転経緯で、この状況解消のために突っ込んだ議論をしたのだろうか。新たな「JCHO清水さくら病院」の病床数は現病院と同程度の159床、8診療科を継続する予定だが、拡充も検討すべきだ。
 機構法3条には「地域において必要とされる医療を提供する」ことなどと目的がある。納得感がある新病院誕生に向け、市には医療法上の「保健医療計画」を策定する県とも手を取り合って汗を流してほしいと思う。医療機能が正式に決まるいわばこれからが本当の正念場なのだから。

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