記者コラム「清流」 富士山、平和の力に

 富士山世界遺産センター松島仁教授から電話が鳴った。「続報がある」。江戸幕府が外交に挑んだ徳川家茂の時代、欧米に贈った富士山の作品が今、次々見つかっている。
 センターは1月、所蔵する富士飛鶴図が幕府から米国への贈答品だったと発表した。そして新たに、英王室が所蔵する日本の美術作品に幕府が英国に贈った富士山のびょうぶが見つかった。電話の続報はその件だった。松島教授は「欧米の武力に富士山の力で挑んだことが分かる」と語る。
 同時期、富士宮市の渡辺実さんは保管するウクライナの子どもたちが5年前に平和を描いた絵を富士山麓に並べた。その後、全国や世界で展示する計画までになった。「富士山で広げたことに意味があった」。世界が認める富士山の普遍的価値。今こそ平和の力に。
 (富士宮支局・吉田史弥)

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