記者コラム「清流」 職責の重さを忘れるな

 「俺たちみたいな仕事ってな、人の命を奪おうと思ったら簡単に奪えんだよ」。往年のドラマ「HERO」で、主人公の検事演じる木村拓哉さんの名ぜりふ。不正に走る警察、それに加担するマスコミに対する批判であり、権力組織の一員である自らに向けた自戒の言葉だった。
 せりふは続く。保身や気の緩みで人を簡単に死なせてしまう-と。熱海市伊豆山で発生した大規模土石流災害の責任を巡る議論を聞き、21年前のドラマを思い出した。
 県は行政責任について検証を進めている。行政職員もわずかな油断で人命を奪いかねない仕事の一つだろう。現実にはドラマのようなスカッとした結末はきっとない。ただ、職責の重さを自戒し続けることを、仕事に就くすべての人は忘れてはならない。

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