ニュースセンター 市川雄一
いちかわ・ゆういち 社会部、浜松総局、浜岡支局(現御前崎支局)、袋井支局、運動部、三島支局、政治部を経て2022年9月から現職。6年在籍した政治部では静岡市政キャップ、県政キャップを歴任。運動部時代にロンドン五輪を現地で取材した。ガジェットオタクで、iPadを使った働き方改革を遂行中。
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時論(1月21日)田辺静岡市政の「功罪」
静岡市の田辺信宏市長が4月の市長選に出馬せず、3期目の任期満了をもって市長を退任する。12年の田辺市政を振り返ると、「功罪相半ばする」という表現がこれほどふさわしい人も珍しい。清水区の桜ケ丘病院の移転問題を巡る対応はその象徴だった。 2021年3月までの4年半、田辺市政を取材した。その間の最大の政治課題が桜ケ丘病院の移転問題だった。同病院は元々、全国に散らばる社会保険病院の一つで、市立病院ではない。しかし、市は老朽化した同病院の移転に深く関与していた。 この問題での「功」は同病院を存続させたことだろう。黙っていても医師が集まる都市部と違い、県内は医師不足が深刻。市が病院存続に向け、土地の
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緊急災害の体制確認 電力や通信など14団体、静岡県庁で連絡会
静岡県は5日、緊急災害時に備えて生活インフラ事業者の連携強化を図る「ライフライン防災連絡会」を県庁で開いた。電力や通信、鉄道など14企業・団体が出席し、南海トラフ地震を念頭に置いた災害対応体制を構築していくことを確認した。 7団体が昨年7月に熱海市伊豆山で起きた土石流災害の対応事例を発表した。東京電力パワーグリッド静岡総支社や日本水道協会県支部などは復旧作業に当たる応援部隊を市外から迅速に派遣し、事前対策が機能したと紹介。JR東海は今年6月から運転規制基準を見直し、土壌に降雨水分量がどれだけたまっているかを示す「土壌雨量指数」の導入を始めたことを解説した。 南海トラフ地震は県境をまたぐ広
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「夏のデジデン甲子園」4市町アピール 静岡、島田、藤枝、小山が出場
デジタル活用の先進的な取り組みを表彰する「夏のDigi田(デジデン)甲子園」が開催中だ。15日までインターネット投票を受け付けていて、本県からは県予選を通過した静岡、島田、藤枝各市と小山町がエントリーしている。 デジデン甲子園は、岸田文雄政権が掲げる「デジタル田園都市国家構想」の実現に向け、政府が企画した。デジタル活用により地域課題を解決し、住民の暮らしの利便性向上や地域産業振興につながる取り組みを表彰する。インターネット投票と有識者による審査を経て、優秀な取り組みを選ぶ。 各自治体の取り組みはユーチューブで見ることができる。静岡市は道路通行規制情報をネットで提供する「しずみちinfo」
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ウクライナ侵攻 影響を考える 静岡県と県立大がセミナー
ロシアによるウクライナ侵攻が北東アジアに及ぼす影響について考えるセミナーが27日、静岡市駿河区の県立大で開かれた=写真=。同大の教授3氏が登壇し、世界の平和構築について意見を交わした。 同大国際関係学部の山下光教授が「ウクライナ情勢と人道主義」と題して基調講演した。普遍的で個人的なものである人道主義は、自分のこととして考えることができると説明。ウクライナ以外にも世界各地で起きている危機に関心を持つことと、将来アジアで起きうる危機を認識することが大事だと説いた。 続いて同大の小針進教授を進行役に、山下教授と奥薗秀樹教授が討論を行い、朝鮮半島情勢への影響などについて意見交換した。 セミナー
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記者コラム「清流」 都道府県は必要か
静岡市と県の行政を計6年取材してきた。意識してきた取材テーマが「県は必要か」。行政は住民に近い基礎自治体(市町)が主になるべきで、県は必要ないのではないかという問いだ。 直接住民と関わる市町行政は取材でも住民の顔がよく見える。一方、県行政の取材は住民の顔が見えにくい。本来、県が力を発揮すべき市町をまたがる課題に対応する広域行政でも、目に見える成果が出ているとは言い難い。 道州制をはじめとする大都市制度の議論は参院選でも盛り上がらなかったが、県内では基礎自治体が道府県から独立する「特別自治市」への移行など、今後動きがありそうだ。自治体の在り方は住民の生活に直結する政治課題。県の必要性も含め
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伊東で知事広聴 8月25日 会場、オンライン参加者募集
静岡県は8月25日、川勝平太知事が地域住民と意見交換する知事広聴「平太さんと語ろう」を伊東市のひぐらし会館で行う。会場での傍聴者とオンライン視聴者を募集している。 熱海、伊東両市のNPO法人代表や6次産業農家など4人が登壇し、川勝知事と語り合う。 事前申し込みが必要で、会場での傍聴は8月18日、オンラインは同24日までに県広聴広報課に申し込む。問い合わせは同課<電054(221)2235>へ。
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静岡県副知事に就任した 森貴志(もりたかし)さん【時の人】
静岡県政史上最長の8年在任した難波喬司氏が退任後、1人体制になった副知事に7月2日付で就任した。県の施策の土台となる新しい総合計画が2021年度から始まったとし、「東京一極集中から地方への流れの中、県が先進になっていくための総合計画を着実に進めたい」と意気込む。 1983年県庁入庁。知事公室長、政策企画部長などを歴任し、2017年3月に定年退職後は県医師会事務局長を今年3月まで務めた。県では国際関係の部署が長く、国際室長時代に浜松市のブラジル総領事館誘致に尽力した。 医務課長時代、伊豆地域の病院破綻を担当し、行き場のない入院患者の受け入れ先探しに奔走した。その時見たのは患者のために無償で
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立候補者8氏 川勝知事との連携、距離感さまざま【参院選しずおか】
22日の公示から1週間が経過し、選挙戦真っただ中にある参院選で、川勝平太知事が鳴りを潜めている。昨年10月の参院静岡選挙区補欠選挙では、街頭で特定の候補者の応援に立つなど注目を集めたが、今回は目立った行動をしていない。補選でのいわゆる「コシヒカリ発言」が問題視された際に表明した「政務をしない」との約束が守られている格好だ。一方で、国と県との連携は県民生活の向上に欠かせない。参院選静岡選挙区の立候補者に川勝知事との連携を聞くと、距離感の違いが浮き彫りになった。 立候補者の中で最も知事との近さを強調したのは、無所属現職の山崎真之輔氏(40)=国民推薦=。県議時代から知事を支えてきたとし、「直接
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海外対面交流再開へ 8月、副知事が韓国会議出席【静岡県議会】
静岡県議会6月定例会は20日、自民改革会議の杉本好重氏(浜松市中区)、望月香世子氏(静岡市清水区)とふじのくに県民クラブの沢田智文氏(磐田市)、四本康久氏(富士宮市)が一般質問を行った。山本東地域外交担当部長は新型コロナウイルスの影響で中断している県幹部の海外での対面交流を8月に再開する方針を示した。友好協定を結ぶ韓国・忠清南道が開催する国際会議に副知事が出席する。望月氏への答弁。 知事、副知事レベルが海外を訪問するのは2019年11月以来、約2年半ぶり。山本部長は「海外との往来再開の兆しが見え始めている」と対面交流の再開理由を説明。「これまで築いた各国・地域とのネットワークを活用し、富
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知事「水循環基本法理念に反する」 JR案に見解【大井川とリニア】
リニア中央新幹線工事に伴う大井川水問題を巡り、JR東海が示したトンネル湧水の県外流出分を大井川に戻す2案について、川勝平太知事は16日、「どちらの方策も流域の健全な水循環を維持すべきとする水循環基本法の基本理念に反する」と述べ、全量戻しには当たらないとの見解を改めて示した。県議会6月定例会で自民改革会議の市川秀之氏(浜松市浜北区)の代表質問に答えた。 JR東海は4月の県有識者会議で、大井川最上流部にある東京電力系の田代ダムの取水を抑制する案と、トンネル貫通後に湧水をポンプアップして戻す案を提示した。川勝知事は「どちらも県内のトンネル湧水が県外流出したままで、同量をその他の水で補塡(ほてん)
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県議選定数 沼津1減、清水町・長泉町各1 自民案に賛同で前進
2023年春の次期静岡県議選の議員定数や選挙区を議論する県議会選挙区等調査委員会(山田誠委員長)は14日、第13回会合を県庁で開き、最大会派自民改革会議が提案している沼津市の定数を4から3に減らし、定数1の清水町・長泉町を、清水町1、長泉町1に分離する案に第2会派のふじのくに県民クラブが賛同した。第1、第2会派が一致したことで、平行線をたどっていた選挙区の議論が大きく前進した。 ふじ会派はこれまで、人口に比例して沼津市を4から3、富士市を4から5にする案を主張していた。この日の会合で同会派の委員は「1票の格差を少しでも減らせるという趣旨で自民の案に歩み寄りたい」と述べた。自民案の1票の格差
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川勝知事、水問題に理解求める 中津川市長と会談【大井川とリニア】
川勝平太知事は1日、リニア中央新幹線の車両基地やトンネル工事が進む岐阜県中津川市を訪れ、市役所で青山節児市長と面会した。川勝知事はリニア整備自体には反対していない立場を強調した上で、静岡県内の南アルプストンネル工事に伴う大井川の水問題への理解を求めた。 会談は非公開。予定時間を35分超過し、約1時間にわたり意見を交わした。会談後に取材に応じた川勝知事は、大井川の水問題について流量、水質、盛り土、水脈などの課題を説明したとし、「深くうなずいて聞いてくれた」と振り返った。リニア開業後に首都機能移転の観点から同市に最高裁判所を誘致するアイデアを披露したことも明らかにした。 一方、知事とは別々に
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記者コラム「清流」 政治は身近なところにある
先日、県内の2大学で講義をする機会があった。一つの大学では講義前に当日の新聞記事について学生同士で話し合う時間があり、いい機会だと聞き耳を立てた。 国会図書館の絶版本デジタル化が報じられた記事について、ある学生が静岡と東京には情報格差があり、ありがたいと指摘していて興味深く聞いた。講義の冒頭、県内の情報格差について話をした。 JR東静岡駅前に県立図書館を約180億円かけて作る計画がある。静岡市内には市立図書館が複数あり、県内を見渡せば市内の大学に通う学生は恵まれている。この問題は県と政令市の二重行政を考えるきっかけになる、と。 講義のテーマは今夏の参院選。政治が身近なところにあることを
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静岡県・難波副知事 2期8年の実績 後任難航、1人体制も
2014年から2期8年務め、5月の退任が決まった難波喬司副知事は19日、報道陣の取材に「リニアと土石流の問題はまだ区切りがついていない。責任というか、自分のこれまでやってきたことから考えて、何らかの形で関わっていかなければいけない」と述べ、職位は変わってもこれまで陣頭指揮を執ってきたリニア水問題と熱海市土石流災害には関わる姿勢を示した。 難波副知事は退任について川勝平太知事とまだ話をしていないとし、「人事は知事が決めること。2期目の任期が切れ、自然の流れとして受け止めている」と述べた。川勝知事が(難波氏に)何らかの形で今後も関わってもらいたい意向を持っていると出野勉副知事から聞いているとし
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記者コラム「清流」 職責の重さを忘れるな
「俺たちみたいな仕事ってな、人の命を奪おうと思ったら簡単に奪えんだよ」。往年のドラマ「HERO」で、主人公の検事演じる木村拓哉さんの名ぜりふ。不正に走る警察、それに加担するマスコミに対する批判であり、権力組織の一員である自らに向けた自戒の言葉だった。 せりふは続く。保身や気の緩みで人を簡単に死なせてしまう-と。熱海市伊豆山で発生した大規模土石流災害の責任を巡る議論を聞き、21年前のドラマを思い出した。 県は行政責任について検証を進めている。行政職員もわずかな油断で人命を奪いかねない仕事の一つだろう。現実にはドラマのようなスカッとした結末はきっとない。ただ、職責の重さを自戒し続けることを、
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盛り土手続き検証、年度内に取りまとめ 県議会で知事方針【熱海土石流】
川勝平太知事は29日に開会した静岡県議会12月定例会の所信表明で、熱海市伊豆山地区で発生した大規模土石流の起点となった盛り土の行政手続きについて、年度内を目標に結果を取りまとめる方針を示した。 県は手続きを担当した職員の聴取を15日から開始し、熱海市でも同様の内部調査を行っている。川勝知事は12月に開く弁護士や学識経験者で構成する「行政対応検証委員会(仮称)」で、県だけでなく市の調査結果を検証する方針を明らかにし、その後同市議会の百条委員会の審議状況を踏まえ、結果をまとめるとした。 また、介護職員不足が深刻化する中、2023年度を目途に県立天竜高に介護福祉士の受験資格を得られる教育課程の
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盛り土適正処理を明記 総合計画後期アクションプラン 静岡県素案
静岡県は18日、総合計画審議会(会長・酒井公夫県商工会議所連合会会長)の第2回会合をオンラインで開き、2022年度から4年間の県の重点取り組みをまとめた新たな総合計画(県の新ビジョン)後期アクションプランの素案を示した。不適切な盛り土造成が被害を拡大させた熱海市の大規模土石流災害を受け、県内全ての盛り土造成行為を適正に処理することを明記した。 具体的には、県土採取等規制条例の改正や、市町と連携した危険箇所の是正指導、総合的な法規制整備を国に求めることなどを列挙した。盛り土造成行為の適正処理は、22年度から100%実施することも掲げた。 素案ではこのほか、幅広い分野で成果指標と目標値を示し
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水循環保全へ条例 静岡県議会開会、知事が方針示す
静岡県議会9月定例会が22日開会し、川勝平太知事は所信表明で、水が地表水や地下水として河川流域を中心に循環することを指す「水循環」の保全に関する条例を本年度中に制定する方針を示した。県は熱海市伊豆山の土石流災害を受け、盛り土など土砂埋め立ての規制強化を目指し土採取等規制条例の改正作業を進めていて、水循環保全条例と合わせ、「水」に関する対応を強化する。 川勝知事は「治山・治水対策など、水循環を介して流域圏と密接に関連する土砂や水に関する諸問題への対応が求められている」と指摘。地球温暖化に伴う気候変動や開発行為等の社会経済活動により、水循環に変化が生じているとし「森林の保水機能の低下による災害
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告示前最後の週末、動き対照的な両陣営 川勝氏「個別」に意見交換 岩井氏「広く」街頭や集会【静岡県知事選】
静岡県知事選(6月3日告示、20日投開票)の告示前最後の週末となった29日、立候補を表明している現職の川勝平太氏(72)と新人で元参院議員の岩井茂樹氏(52)はそれぞれ県内に繰り出し、意気込みをアピールした。ただ、その動きは対照的。選挙戦の争点を意識して大井川流域に暮らす有権者と個別に意見交換した川勝氏に対し、岩井氏は県西部で街頭演説やミニ集会など分刻みのスケジュールをこなし、1人でも多くに自らの訴えを届けようと走り回った。 公務優先で臨む川勝氏は、実質この日が選挙をにらんだ対外活動の初日になった。リニア中央新幹線工事に伴う水問題が浮上している大井川流域に向かい、地下水を利用する藤枝市のイ
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川勝氏と岩井氏、リニア、コロナ...将来像議論 静岡新聞社で政策対談
知事選(6月3日告示、20日投開票)に立候補を表明している現職の川勝平太氏(72)と新人の元参院議員岩井茂樹氏(52)=自民推薦=が26日夜、静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で政策対談を行った。リニア中央新幹線工事に伴う大井川流量減少問題や新型コロナウイルス対策、県の将来展望など県政の主要課題について熱のこもった議論を繰り広げた。 県の将来像を巡っては両氏の特色が出た。川勝氏はトヨタ自動車が裾野市で進める先進技術の実証都市「ウーブン・シティ」に絡み、「県東部地域を健康で最新技術があふれる地域にする」との構想を示した。隣接する長泉町で先進的な医療城下町づくりが進んでいるとして「互いに実験的な都