リニア批判票狙う共産森氏 衆院選見据えた思惑も【静岡県知事選の構図㊦】

 このままではリニア建設が推し進められてしまうのでは-。リニア中央新幹線整備にさまざまな問題を提起してきた川勝平太知事が県庁から突如去ることになり、共産党県委員会の関係者は危機感を強めた。だが、独自候補の擁立作業は難航し、4月に県委員長に就いたばかりの森大介氏(55)自らが出馬することで、何とかリニア推進の流れに「待った」をかける構えを整えた。
メーデーの集会で登壇する共産・森大介氏(中央)。衆院選を見据え、党勢拡大の思惑も絡む=1日、静岡市葵区の駿府城公園 先に出馬表明した大村慎一(60)、鈴木康友(66)の両氏はリニア建設について、出馬会見などでそれぞれ「推進のため、対話で課題解決を図る」「事業を進め、生態系との両立を目指す」と推進の立場を鮮明にした。浜松市の新野球場整備、中部電力浜岡原発再稼働についても、両氏に明確な主張の違いは見えなかった。
 両氏の考えが徐々に明らかになるにつれて、県委員会幹部は思いを強くした。「2人に対する県民の批判票の受け皿をつくらないといけない。候補者を立てない選択肢はあり得ない」
 リニア工事に伴う大井川の水問題に関し、川勝知事のJR東海や国への厳しい姿勢を評価してきた県委員会。前々回の知事選で自主投票、前回は自主支援の対応を選択し、独自候補擁立を見送った経緯がある。知事の辞意表明後に始まった今回の候補者検討は、明らかに出遅れた。
 党の県組織を長年率いた山村糸子前県委員長が3月に死去し、新体制構築がおぼつかない中、2013年以来の独自候補選定は難航した。複数人が候補に挙がったがいずれも不調に終わり、委員長の森氏自らが立候補する異例の選択肢しか残っていなかった。
 党員の減少や高齢化は全国で顕著になっている。昨年4月の県議選では現職が敗れ、県議会唯一の議席を失った。陣営は知事選を通じ、「党の理念をもっと多くの人に知ってもらい、党勢回復につなげたい」ともくろむ。年内にも予想される衆院選に向け、少しでも弾みを付けたい考えだ。
 リニア問題が全国の関心を集める中、日本維新の会も、共同代表の吉村洋文大阪府知事がリニア事業推進に向けて候補者を擁立するか、他の候補者を応援する考えを示した。
 ただ、党県総支部の関係者は「県内の党勢を考えると独自候補擁立は難しい」と、全国から視線が注がれる選挙で存在感を発揮できない歯がゆさを口にする。特定の候補者を支援する考えは現時点ではなく、実質自主投票になる可能性が高い。
 このほか、政治団体「個人の尊厳党」代表の横山正文氏(56)も出馬を表明した。衆院選を見据えた各党の思惑も絡んだ知事選は、9日に告示を迎える。
 (知事選取材班)
 

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