保健所の負担長期化「国へ全陽性者報告、見直しを」 改善に腐心【新型コロナ】

 新型コロナウイルス対応で保健所の負担が長期化している。県内は第6波以降も新規感染者が数百人で推移。健康観察や発生届の手続きに加え、宿泊・自宅療養証明書の発行作業が多く発生した。県などは業務の最適化や外部人材の活用を進め、改善に腐心する。軽症・無症状者が大半を占める実態を踏まえ、陽性者の国への全例報告を見直すべきとの声もある。

業務量の増加で対応に追われる職員ら=5月下旬、静岡市保健所
業務量の増加で対応に追われる職員ら=5月下旬、静岡市保健所
季節性インフルエンザと新型コロナオミクロン株との比較(静岡県公表)
季節性インフルエンザと新型コロナオミクロン株との比較(静岡県公表)
業務量の増加で対応に追われる職員ら=5月下旬、静岡市保健所
季節性インフルエンザと新型コロナオミクロン株との比較(静岡県公表)


 「申請しても1カ月は待ってもらう状態」
 5月下旬、静岡市保健所の杉山智彦保健予防課長は療養証明書の発行が停滞した現状を説明した。
 療養証明書は保険金給付に必要な書類。保健所がすべき専門サービスではないが、入院を要さない感染者が高止まりし、請求が絶えない。自宅療養者の容体急変の対応など急ぎの本来業務が入ると後回しせざるを得ず、処理がたまる。
 発生届の対応も負荷が大きい。国は陽性者情報を医師自身が管理システム「ハーシス」に打ち込むことを想定しているが、同市では医療機関が記入した用紙を保健所がファクスで受け取り、代行入力している。ハーシスに登録する以外の患者情報を提供してもらう事情があり、この手法が最善と判断した。
 一方で、保健所の役割である健康観察の一部を医師が担う取り組みを導入した。ある医師は「データ入力と健康観察において行政、医療双方が持ち場を融通した」と実効性を強調する。
 負担軽減を巡り、別の医師はオミクロン株の感染実態は季節性インフルエンザ並みなのに、陽性例をすべて国に報告する仕組みを疑問視。「重症化リスクのある人に絞るなど、柔軟に是正すべきだ。しわ寄せがいつまでも現場に及び、改善策に多額の公費もかかる」と問題提起した。
 浜松市は療養証明書の交付やハーシス入力業務について、人材派遣会社から最大10人の従事者を確保する方針。費用は約6600万円を見込む。
 県は関連費2億9400万円を組み、保健所に派遣する92人の応援職員を外部委託に切り替えるとともに、疫学調査の関連業務なども合わせて任せる。

 ■オミクロン株 重症化率低さ顕著 
 県が30日までに公表したデータによると、新型コロナウイルスオミクロン株の死亡率などは、季節性インフルエンザに比べ同等かそれ以下の傾向が明らかになった。
 死亡率と重症化率は季節性インフルエンザが0.09%、0.08%に対し、オミクロン株は0.07%、0.007%。重症化率の差が顕著で、オミクロン株感染の重症者は県内で4月27日から5月27日まで1カ月確認されなかった。中等症率は季節性インフルエンザ0.51%、オミクロン株0.32%。
 オミクロン株以外の新型コロナ重症化率は、初期の従来株が1.47%、アルファ株が1.45%、デルタ株が0.63%。株の変遷とともに低減した。
 データは新型コロナが県内の、インフルエンザが全国の数値。

あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞