経済部 河村英之
かわむら・ひでゆき 1978年生、静岡市駿河区出身。2002年入社。2023年8月から経済部。経歴:水窪、袋井、三島の各支局に勤務。ほか浜松総局、東京支社、政治部(県政)、社会部に在籍しました。
-
「空前の工場誘致」幻に 難局打開へ道筋どう描く【静岡県知事選 静岡の現在地①経済振興】
川勝県政の約15年を経て、本県はどのような姿に変貌を遂げたのか。26日投開票の知事選で選ばれる新たなリーダーが解決すべき課題は何か。経済や人口、医療、教育、防災の各分野のデータや現場の声を拾い上げ、静岡県の「現在地」を確かめる。 「成功していれば、間違いなく地域経済の景色は変わっていた」 昨年10月、半導体受託生産で世界有数のシェアを誇る台湾・力晶積成電子製造(PSMC)などが宮城県内への進出を発表した工場建設計画。静岡県の幹部職員は、本県も誘致レースに参戦し、小山町の工業団地が全国3カ所程度に絞られた最終候補の一つだったと打ち明けた。 事業総額8千億円超-。100億円規模が大型案件に
-
値上げ効果が浸透 通期予想上方修正 はごろも、3月期
はごろもフーズは30日、2024年3月期の通期連結業績予想を上方修正し、経常利益を昨年11月2日公表の前回予想比26・1%増の22億6900万円、純利益を34・5%増の17億4900万円とした。値上げ効果が販売の落ち込みで生じる影響を上回ると見込む。 主力のツナ缶やコーン、国産みかん缶詰など幅広い分野で価格改定を行った。売上高は2・4%増の735億100万円に見直した。 (経済部・河村英之)
-
小糸製作所 増収増益 3月期 生産増と円安効果
小糸製作所は25日、2024年3月期連結決算を発表した。世界的な自動車生産台数の回復に円安効果が重なり、売上高は前年比9・9%増の9502億9500万円と2期連続で過去最高を更新した。経常利益は30・4%増の632億6500万円、純利益は37・8%増の408億7900万円で大幅な増益となった。 地域別売上高は日本が12・7%増の3617億円。半導体不足の解消や円安による輸出向けの回復が収益を押し上げた。一部完成車メーカーの認証不正問題の影響は限定的だった。 北米は14・5%増の2865億円で、全米自動車労働組合によるストライキなどの影響を受けたが新規受注の伸びで補った。中国は日本車の販売不振
-
静岡県内上場企業 25日から3月期決算発表 円安、物価高 影響は
静岡県内に本社や主要拠点を置く上場企業の2024年3月期決算の発表が25日に始まる。長期化傾向にある円安が輸出型企業の収益を下支えする一方、記録的な物価高に伴う消費者の節約志向の高まりは内需型企業に痛手になっている。各社の業績にどう反映されているかが焦点となる。 金融機関や国際会計基準(IFRS)採用企業などを除く県内31社の23年4~12月期決算は基幹産業の自動車関連が好調を持続し、売上高合計が前年の約5兆1千億円から約5兆7千億円へと伸長した。昨夏以降140円台後半で推移した円安や半導体不足の解消がプラスに寄与した。一方、非製造業は新型コロナウイルス禍特需の揺り戻しに苦戦し、小売や通販
-
価格転嫁できず 中小苦悩 大手に続き高水準賃上げも… 静岡県内 多重下請けで負担増
大手に続き、中小企業でも高水準の賃上げ動向が明らかになった2024年春闘。ただ実際は物価の上昇分を価格転嫁できないまま賃上げに踏み切り、自社負担の増加に苦しむ中小が少なくない。背景の一つに挙がるのが大企業を頂点とする多重下請け構造だ。静岡県内の関係者は取引上の力関係に物を言わせた古い商慣習があるとし、「是正しなければ持続的賃上げにはならない」と指摘する。 「人件費もそうなれば良かったが…」 県中部の自動車部品メーカーで役員を務める40代の男性がつぶやいた。昨年、初めて元請け会社が納品価格に電気代高騰分を上乗せしてくれたが、人件費分は話の俎上(そじょう)に載らなかった。一方で
-
24年の春闘賃上げ1万4970円 前年比6737円上昇 大手と中小で格差も 連合静岡集計
連合静岡は18日、2024年春闘の賃上げに関する回答・妥結状況の集計結果を公表した。定期昇給相当とベースアップ(ベア)を合わせた賃上げ総額は加重平均で1万4970円となり、前年を6737円上回った。賃上げ率は4・63%で1・99ポイント上昇した。賃上げの総額、率ともに07年以降の最高水準で、大企業で見られた賃金情勢の変化が県内にも表れた。 5日時点で回答・妥結した205組合の集計。従業員300人未満の賃上げ総額は1万1447円(前年比3588円増)、300人以上は1万5065円(6822円増)。企業規模を問わず大幅な伸びを示した一方、大企業と中小企業とで格差が生じている実情も浮かんだ。ベア
-
中堅・中小設備投資6.5%増 24年度計画 非製造業が伸長
静岡経済研究所が発表した静岡県内中堅・中小企業設備投資計画調査は、回答した336社の2024年度計画額が23年度実績見込み比6・5%増の873億6200万円だった。社会経済活動再開の影響が反映された23年度の高水準を維持した。物流の停滞が懸念される「24年問題」への備えが活発な非製造業の伸び率がとりわけ高かった。 非製造業の計画額は14・8%増の510億7700万円。運輸・倉庫業が21・6%増加し、全体の5割近くを占め、建設業も47・5%増えた。いずれも24年問題に向け新倉庫を建設したり、業務を効率化したりする対応が数字に表れた。一方で電気・ガス業は42・6%減となった。 製造業は3・3
-
静岡県、企業立地を強化 「大胆な誘致」へ推進会議 用地創出、市町と連携
円安などを背景に製造業などの国内回帰が加速する状況を踏まえ、静岡県は魅力ある企業立地環境の強化に乗り出す。関係部局で構成する推進会議が3月下旬に発足した。市町と連携して事業用地の創出や補助制度の見直しを進め、産業成長戦略に掲げた「大胆な企業誘致」の実現を目指す。 本県の企業立地動向によると、2022年の製造業などの立地件数は52件と全国4位で、23年連続で全国5位以内の高水準を維持した。一方、産業用の分譲用地は減少傾向にあり、23年度末は79・9ヘクタールと16年比で約3割減った。 県内は遊休地があっても農地法などの規制が足かせになったり、売れ残りを懸念して開発をためらったりするケースが
-
2月の静岡県内有効求人倍率1・20倍 2024年問題目前、建設業など積極的
静岡労働局が29日発表した2月の静岡県内有効求人倍率(季節調整値)は前月を0・01ポイント下回る1・20倍で、全国値(1・26倍)を17カ月連続で下回った。物流の停滞が懸念される2024年問題を目前に控え、人手を確保したい建設業や運輸業の求人数が伸びた一方、コスト負担増が続く製造業で採用を見送る動きがみられた。 業種別の新規求人数は、建設業が民間工事の受注が増加するなどし、前年同月比8・2%増の2340人。運輸業は7・2%増の1484人だった。 製造業は10・9%減の3166人。価格転嫁が進まない中での賃上げが企業収益の重しとなり、採用控えにつながっている。卸売業・小売業は特定企業が定期
-
平均妥結額1万6711円 春季賃上げ 静岡県内労組第1報 今期も大幅増
静岡県が28日発表した県内民間労働組合の2024年春季賃上げ要求・妥結状況(第1報)によると、19日までに妥結した19組合の平均妥結額は加重平均で1万6711円(前年同期比4812円増)で、賃上げ率は4・94%(1・16ポイント増)だった。 昨年に続く大幅な増加で、妥結額、賃上げ率ともに1998年以降の最高となった。大手企業や首都圏の今春闘で鮮明になった賃上げ機運の高まりが本県にも表れたとみられる。県は「回答数が少なく、これから妥結の組合もあり、最終報で数字が変わる可能性はある」としている。 企業規模別は300人以上が1万6979円(賃上げ率5・14%)、299人以下が9718円(3・9
-
YSKへのTOB成立 いなば食品傘下で再生へ
焼津水産化学工業(YSK)は27日、静岡市清水区の食品メーカーいなば食品が100%出資する特別目的会社の株式公開買い付け(TOB)が成立したと発表した。東証スタンダードの上場を廃止し、いなば食品の完全子会社として経営再建を図る。YSKの株式非公開化は、アクティビスト(物言う株主)ファンドの介入で一度は不成立になる曲折を経た。 YSKの山田潤社長は同日、静岡新聞社のインタビューに応じ、「最適なパートナーであり、非常に心強い」と話し、いなば食品の稲葉敦央社長は「YSKの企業価値向上に努める」とコメントした。買収資金は約164億5千万円とみられる。 TOBに応募した株式数は約1005万株で発行
-
記者コラム「清流」 旅先で考えたこと
休暇を使い九州を旅行した。観光地はもとより交通アクセスの悪い温泉街まで外国人が多くてびっくり。熊本県で台湾積体電路製造(TSMC)の工場が開所し、九州は今、最も熱い地域の一つ。好況を一過性にしまいと、あれこれ施策に知恵を絞る自治体の姿が目に浮かんだ。 翻って本県はどうかも考えた。観光に限らず、産業停滞、少子化、若者流出-。経済のてこ入れに向けて課題が横たわる。「理想郷」「文化の首都」「ポスト東京」と、県が毎年の予算発表のたびに掲げる聞こえのいいフレーズは実を結び、県民は潤っただろうか。 本紙が行った県内企業調査では県政に対する厳しい評価が相次いだ。中には川勝平太知事の政治力や資質を問う記
-
JR静岡駅北口の再開発ビル「M20」完成式 4月から学校入居、飲食店など営業
JR静岡駅北口で建設が進んでいた再開発ビル「M20」の竣工(しゅんこう)式が25日、同所で行われた。4月から学校法人静岡理工科大グループの学校が入居し、約800人の学生が通うほか、低層階では商業施設が営業する。県都の玄関口の新たなにぎわい拠点として期待される。 地下1階、地上15階建てで延べ床面積約1万8千平方メートル。地下1階から地上2階までは飲食店などが、地上3階以上は静岡デザイン専門学校や静岡理工科大の研究室、オフィスが入る。 ビルの名称は所在地の「御幸町20番地」に由来し、一般公募から選ばれた。2020年9月に御幸町9番・伝馬町4番地区市街地再開発組合が設立され、22年6月に着工
-
今年の花見は安・近・短 物価高が家計圧迫影響? 全国調査「行く予定」増、静岡の開花予想は30日
調査会社インテージ(東京)が行った今春のお花見に関する意識・行動調査で、物価高を理由に「費用は安く、距離は近く、日程は短く」の“安近短”で楽しもうとする傾向が明らかになった。お花見を予定する人は前年より増加し、県内も新型コロナウイルス5類移行後初の桜シーズンを満喫する人が目立ちそうだが、家計圧迫の影響が反映されそうだ。 調査は2月に全国の15~79歳2500人に実施。お花見を「予定している」「するかもしれない」の合計は、前年から3・2ポイント増の34・5%。コロナ禍だった2021年の初調査時の21・7%から右肩上がりとなった。 シチュエーションは「昼間に近場で桜が
-
障害者雇用の機運高まる 静岡県内企業 4月法定率引き上げ、人手不足で拍車 行政、専門機関が定着支援も
静岡県内で障害者雇用の機運が高まっている。法定雇用率の引き上げが4月に迫るほか、人手不足感の強まりを受け、障害者を戦力として迎え入れたい企業側の思いが後押しする。採用実績のない現場はノウハウと準備が欠かせず、行政や専門機関がマッチングに入るなどして雇用定着を支援する様子が見られる。 「ますます(採用に)前向きになった」 静岡市葵区の料亭浮月楼の森輝通支配人(52)は、2月に市内で開かれた障害者向け就職相談会を振り返った。洗い場や庭園管理の業務に関心を持つ知的や身体などに障害がある14人と面談し、高い意欲を感じたという。 法定雇用率の引き上げで今春から自社に障害者の雇用義務が生じると知っ
-
平均給与26万4626円 12月静岡県、前年比2・1%増
静岡県がまとめた昨年12月の毎月勤労統計調査(事業所規模5人以上)によると、1人当たりの平均月額給与(所定内給与と超過労働給与)は前年同月比2・1%増の26万4626円と12カ月連続で前年同月を上回った。20年平均を100とする名目賃金指数は104・8。 所定外労働時間は0・8%増の11・2時間。指数は120・4。 常用労働者数は144万2381人で、うち約3割を占める製造業の所定外労働時間は14・9時間。パートタイム労働者の比率は0・2㌽増の31・7%だった。
-
静岡県内上場企業、製造業売上高5兆円超 23年4~12月期 自動車関連が好調持続
静岡県内に本社や主要拠点を置く上場企業の2023年4~12月期決算が21日までにおおむね出そろった。静岡新聞社の集計では、金融機関と国際会計基準採用企業、決算発表を延期した電業社機械製作所を除く31社の売上高合計は約5兆7451億円。製造業は自動車関連が円安を追い風に堅調で、売上高が5兆円を超えた。減収となった企業は中国、東南アジアの景気回復遅れや巣ごもり需要の反動などが影響した。 増収は製造業21社のうち15社、非製造業10社のうち5社。製造業はスズキ、共和レザー、小糸製作所が過去最高を更新し、村上開明堂も前期から大幅に販売を伸ばすなど自動車関連の好調ぶりが際立った。非製造業はハマキョ
-
経済活性化へ「人口減対策を」静岡県政に経営者ら厳しい視線 県内100社アンケート
静岡新聞社が行った静岡県内主要100社アンケートで、地域経済の活性化に必要な施策について、「人口減少対策」とした回答が最多の32%を占めた。人口の増減は税収や労働力の維持確保に直結し、自治体基盤の根幹に関わる。ただ県内は年間で1万~2万人ずつ減り続け、改善の兆しは見えない。今回初めて設けた自由記述からは、企業トップらが川勝県政に厳しい視線を向けている実情が浮かんだ。 「人が流入する仕掛けを」「中小企業の持続的発展なしに県全体の改善にはつながらない」 金融、小売、宿泊、物流、建設-と幅広い業種から危機感を訴える回答が相次いだ。基幹の製造業の低迷で地域経済の地盤沈下が長らく指摘され、「県行
-
24年度の静岡県産業成長戦略 企業集積や人材確保推進 選ばれる地域へ好循環創出
静岡県は16日、県産業成長戦略会議を県庁で開き、2024年度の産業成長戦略を取りまとめた。活力ある企業の集積やデジタル技術を積極活用した産業人材の確保、競争力の高い事業の育成などを推進し、成長への好循環創出を目指す。 県が重点施策に位置づけるスタートアップ(新興企業)関連は28年度までに資金調達総額を累計260億円以上などとする目標達成に向け、創業前から産業化まで切れ目のない支援を提供する。産業人材確保は小学校から大学・専門学校まで一貫的、体系的なサポート体制を構築する。 企業誘致は若者に人気のあるICT・サービス関連について首都圏中心の約6万社に調査を実施し、本県に進出意欲のある企業を
-
スター精密 菊川、牧之原に新工場 国内生産倍に
スター精密は9日、工作機械事業で主力のスイス型CNC自動旋盤の世界的な需要拡大に対応し、菊川、牧之原両市内にそれぞれ新工場を建設すると発表した。国内の生産能力を2倍へと増強する。 新工場の一つは、菊川市三沢の現菊川工場敷地内に新棟(仮称・菊川南工場)を建設する。もう一つは牧之原市布引原に確保した用地に構える。菊川南工場で付加価値の高い中核部品を製造し、牧之原工場で組み立てを担い、最終製品化する。 総事業費は計150億円。菊川南は2025年11月に、牧之原は26年7月に稼働開始を予定する。両工場の稼働後は、1カ月当たりの生産高が50台から100台へと伸びるという。 同社は海外市場での営