小糸製作所・加藤充明社長 経営目標達成へ世界戦略 中国メーカー受注が鍵【聞きたい】   

 半導体不足の解消などで業況が大幅に改善した自動車業界。ヘッドランプの国内シェア約6割、世界シェア約2割を有する中で、2030年度に売上高1兆3千億円を掲げた経営目標の達成に向け、技術革新とグローバル戦略を強化する構えを示す。

加藤充明氏
加藤充明氏

 -24年の事業環境をどう見通すか。
 「23年度の世界の自動車生産台数は前年から5%増加し、24年度も2~3%伸長する方向ではないか。ただ、市場が拡大している中国で日本車が相当厳しい。電気自動車(EV)化の出遅れが原因で、(同国における日本車生産は)前年比85%程度とみられる」
 -中国のてこ入れや世界市場の取り込みが持続的成長の鍵を握る。
 「中国は中長期的に見て市場全体を引っ張るような存在。ローカルメーカーの受注獲得に攻めの姿勢を貫く。広州にある技術センターの人員拡充も視野に入れる。北米は雇用情勢の悪化で固定費負担が非常に重いが、受注機会の余地がまだまだあり、工場の拡張など生産能力を高めることも考えたい。一つ一つクリアしながら2期連続の増収増益を、さらには増益幅の拡大をかなえていく」
 -新規事業の展望は。
 「自動運転向け次世代センサー『LiDAR(ライダー)』は量産設備が整った。独自技術を持つ米国のベンチャー・セプトン社を子会社化する方向でも動き始めた。センサーを信号機といった交通インフラと連携させるシステムづくりなど、新規の探索研究や拡販体制を24年に構築できれば。EVが急激に伸びたように、自動運転も必ずその時代がやってくる。われわれが先頭に立つ実力を今のうちに付けておく」
 -静岡工場の機能の一部を東北に移管することを決めた。
 「生産拠点を1カ所に集中させることはリスクがあるのと、日本のものづくりを活性化する観点からも自然な姿ではないか。研究開発や生産を担う静岡は実質、会社の機能の中心であり、今後も位置付けは変わらない。東北で採用した人材は静岡で数カ月研修を受けるので交流も生まれる。東北工場をつくるからといって静岡の雇用減にはつながらず、生産拡大となればむしろ現在の(県内4千人の)雇用規模は発展できる」
 (聞き手=経済部・河村英之)

 かとう・みちあき 1982年入社。取締役、専務営業本部長・国際本部副本部長などを経て2021年6月から現職。静岡市葵区出身。県立静岡東高、明治学院大卒。64歳。

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