経済活性化へ「人口減対策を」静岡県政に経営者ら厳しい視線 県内100社アンケート

 静岡新聞社が行った静岡県内主要100社アンケートで、地域経済の活性化に必要な施策について、「人口減少対策」とした回答が最多の32%を占めた。人口の増減は税収や労働力の維持確保に直結し、自治体基盤の根幹に関わる。ただ県内は年間で1万~2万人ずつ減り続け、改善の兆しは見えない。今回初めて設けた自由記述からは、企業トップらが川勝県政に厳しい視線を向けている実情が浮かんだ。

静岡県経済の活性化に必要だと思う施策
静岡県経済の活性化に必要だと思う施策


 「人が流入する仕掛けを」「中小企業の持続的発展なしに県全体の改善にはつながらない」
 金融、小売、宿泊、物流、建設-と幅広い業種から危機感を訴える回答が相次いだ。基幹の製造業の低迷で地域経済の地盤沈下が長らく指摘され、「県行政が経済を重視していない」(機械製造)とするシビアな意見が見られた。県が本県を形容する際に用いる「ふじのくに」を念頭に、「言葉で美化しても人が流出しては意味がない」(同)と、施策の推進手法への注文も寄せられた。
 人口減対策のほかには、新産業創出17%、中小企業振興14%、企業誘致13%、観光振興12%などが続き、トップらの関心が多分野に及ぶ様子も見て取れた。
 このうち社会経済活動の正常化に伴い活発化し、国が成長分野に位置づける観光面に関して「インバウンド(訪日客)対応が弱く、外から人を呼び込めていない」(小売)とてこ入れを求める声が上がった。移住者の取り込みに「客観的に本県はもっと増えていいはず」(宿泊)とした企業もあった。
 アンケートは景気動向調査として毎年実施。地域経済の活性化に必要な施策はその一環で尋ね、人口減少対策が最も多い傾向は例年と同様だった。同設問の自由記述欄は今回初めて設け、54社が何らかの回答を記した。
 (経済部・河村英之)

県幹部「より戦略的に」
 静岡県の人口(実績値)は2007年の379万7000人をピークに20年は363万3000人と、16万人余り減少した。県内市町で5番目に多い磐田市の人口に相当する。
 総務省などのデータによると、若者の東京圏への転出超過が顕著で、とりわけ女性の流出が目立つ。中長期的に地域活力が失われることへの懸念は強まる一方で、県は情報通信やデザイン系など、若者に人気のサービス業を積極的に誘致する方向性を打ち出した。子育て世代や県外離職者の移住取り込みも強化する。
 低迷する既存産業の立て直しも急務だ。基幹産業である自動車など輸送用機械の製造品出荷額は08年のリーマン・ショック前に比べ2~3割減で推移。本県の“稼ぐ力”の低下が指摘され、産業構造の転換を訴える声も少なくない。県の幹部職員は「経済の回復度合いが他県に比べて遅く、新しい視点で経済・産業振興策を見直す必要性を感じる」とした上で、「より戦略的に臨みたい」と強調した。

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