スタバ辞退 中断した静岡・城北公園再整備 県大生に聞く【決める、未来 若者@まちづくり㊤】

 まちづくりって何だろう。少子化で若者の声が政治に届きにくい時代になったと言われる。政治の中心は中高年層。でも、まちに将来も暮らし続けるのは若者だ。矛盾に似た境遇を彼らがどう感じているのか知りたくなり、静岡県内の地域課題をぶつけてみた。初回は住民の反発で中断した静岡市葵区の城北公園再整備事業。県立大経営情報学部の経営学ゼミに所属する4年生3人に尋ねた。

意見交換後、資料や新聞記事を手に改めて事業を振り返る学生ら=6月中旬、静岡市駿河区の県立大
意見交換後、資料や新聞記事を手に改めて事業を振り返る学生ら=6月中旬、静岡市駿河区の県立大

 「周辺住民ともっと早い段階で意思疎通が必要だったのでは」
 田中彩恵さん(22)は再整備で出店予定だったスターバックスコーヒーが撤退に至った経過を振り返り、問題提起した。同事業は2016年から公募制のワークショップなどを実施し、園内に飲食施設や駐車場を設ける基本方針を策定した。ところが地元説明はそれより後だったため「当事者不在の手続きだ」と問題視する声が上がり、雲行きが変わった。
 6ヘクタールと広い同公園は樹木管理など年間4千万円超の維持費が課題だ。収益施設の設置を認める代わりに民間企業に公園整備費の一部を負担してもらう「パークPFI制度」を導入し、運営改善を図る。田中さんは「敷地内に市立図書館もあり、『一層開かれた空間に』という趣旨は理解できる」と続けた。
 石井杏奈さん(21)は、より多くの人が基本方針の策定段階に関わる方策を考えた。今回、事業の周知は市ホームページに掲載された程度。「大学と連携し、学生に『考えさせる』くらいの仕掛けがあっていい。授業で取り上げるのはどうか」と提案した。
 市民参加が実践できた場合、鍵を握るのは合意形成の仕方だろう。憩いや学び、交流の場である城北公園を巡る世代間のニーズや価値観は多様だからだ。
 スターバックスが撤退表明した4月、SNS上は「エゴがスタバを追い出した」などと住民を悪者扱いする書き込みが散見されたが、住民側はカフェの設置に反対していない。一方で子育て世代や若年層に多い計画の賛同派は事態を静観中。関係者間の主張は整理されていない状況だ。
 望月豪士さん(21)は解決の道筋を「対話しかない」と指摘。「行政を含め、みんなが互いを尊重しながら着地点を見いだしてほしい」と訴えた。
 市民参加や合意形成はあらゆる行政施策にとって大切なプロセスだ。石井さんと田中さんは「行政の情報発信には工夫を求めたい」「市民も主体性を持たなければ物事が意図しない方向に進む可能性がある」と厳しく言及。望月さんは「議論することが政治参加の一歩になると知った」と前向きに捉えた。

 城北公園(静岡市葵区)の再整備事業 開設から40年が経過し、維持費の増大や駐車場がない不便さの改善を図る。民間活力を取り入れるパークPFI制度を導入する予定で、カフェと子育て施設、駐車場の整備を提案した企業グループが事業者に選ばれた。これに一部住民が「計画を知らない人が多い」と反発し、スターバックスコーヒーが出店を辞退。住民側は市と事業者の実施協定締結差し止めを求め、住民訴訟を起こした。

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