産科、コロナ対応に苦心 妊婦の感染増 診療所から病院へ負担偏重も

 新型コロナウイルスの流行で、産科病院が本来の役割以上の対応に追われる事態が続いている。コロナに対する抵抗感などから妊婦感染者の受け入れが産科診療所で進まない中、「第8波」の感染爆発で拍車がかかった。感染状況が落ち着きつつある今も改善し切れていないといい、関係者は感染症法上の5類移行に向け、是正を訴える。

コロナ対応で忙しさに拍車がかかる産科病院。安心して受診できる体制づくりが急務となっている=1月下旬、県内
コロナ対応で忙しさに拍車がかかる産科病院。安心して受診できる体制づくりが急務となっている=1月下旬、県内

 「できる限り自施設で管理を」
 県は1月中旬、感染したかかりつけの妊婦の対応を病院に回す産科診療所が相次いでいるとして、陽性が判明しても分娩(ぶんべん)まで一貫して取り扱うよう通知した。病院に依頼する場合は、切迫早産の兆候がある▽中等症以上のコロナ症状がある-など4点の目安を明記した。
 病院側は通常の妊婦健診や分娩、産後診療を行う傍ら、感染した妊婦の健康観察などに追われる。コロナ対応が一層の負荷をかけている格好で、病院勤務の助産師は「限界を感じる時がある」と漏らす。
 県内は第8波の昨年11月以降、妊婦感染が増加。流行前に40人程度だったのがピークの昨年末は約100人に上り、現在も80人ほどが療養中という。
 産科診療所は病院が多い地域ほど病院に頼りがちで、感染が分かるとたとえ元気な妊婦でも直ちに病院に回すケースがある。感染中の分娩に至っては、ほぼ県全域で病院が受けている状況。中には圏域を越えて搬送することもある。
 妊婦感染の対応を巡っては当初は感染症指定医療機関や病院が受け入れていた。オミクロン株の特性が明らかになってきた昨年夏、以前のように産科診療所が診療する方向で認識が共有されたはずだった。
 一方で産科診療所は小規模な施設が多く、従事者の感染で休診を余儀なくされたり、感染予防に十分な動線を確保できなかったりする。関係者は「(コロナ対応に)及び腰になる事情も理解してほしい」と明かす。
 コロナは5月、法的な位置付けが緩和され、医療機関が広く患者を診ることになる。行政と医療現場の連絡調整に当たる災害時小児周産期リエゾンの市川義一医師(47)=静岡赤十字病院第二産婦人科部長=は「コロナの有無にかかわらず妊婦が安心して受診できる体制を整える、いい機会にしたい」と話した。

静岡県の周産期システム リスクに応じた“3階建て”体制
 県内の周産期医療は、妊産婦のリスクに応じて1次~3次の医療機関が対応する“3階建て”で体系化されている。県地域医療課は「妊婦感染者も例外ではない」と説明。新型コロナに感染しても状態が安定している妊婦が2次以上の医療にかかる現状は不適切との認識を示す。
 県によると、1次医療機関は産科クリニック38カ所と助産所29カ所など。ハイリスクな母体、胎児を受け入れる2次医療機関は地域周産期母子医療センターや産科救急受入医療機関を標ぼうする各地の総合病院計16カ所。
 3次医療機関は新生児集中治療室などの高度な設備を持つ。県立こども病院(静岡市葵区)、順天堂大静岡病院(伊豆の国市)、聖隷浜松病院(浜松市中区)の3カ所。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞