事業開拓に目立つジレンマ 「必要」感じるも二の足 静岡経済研調査

 静岡経済研究所が静岡県内企業に行った意識調査によると、新規事業の創出や業態転換の必要性を感じると答えた企業は7割を超えた。変化の激しい経済環境への経営者らの危機感が浮き彫りになった格好。ただ、実行に消極的な回答も一定割合を占めた。岩本真弥主任研究員は「業種によって差が見られるが、新たな領域に挑戦するリスクと不安が二の足を踏ませているのではないか」と分析する。

県内企業の新規事業に対する考え方
県内企業の新規事業に対する考え方

 調査は新規事業創出などの必要性を「強く感じる」「やや感じる」が計76・1%。一方で創出に「慎重」「取り組まない」は36・4%に上り、「積極的に推進」も19・7%にとどまった。
 業種別では製造業やサービス業が比較的積極的で、小売業、卸売業などが慎重姿勢だった。岩本主任研究員によると、小売業や卸売業は製造業に比べ自社独自の強みが見えにくいケースが多く、仮に主力事業が数年内に不安定化する懸念を抱えていても、「(事業開拓に向けて)何をどこから始めればいいのかという困惑があるのでは」と指摘。顧客や消費者のニーズに近づくことが新規事業参入の一つの鍵とした。
 新規事業を立ち上げた企業に着想やきっかけを聞くと、実質的な起案者が「社長・会長」とした回答が7割と突出した。事業開拓のアイデアを全社員に求めつつ、経営者が自らリーダーシップを発揮している様子がうかがえる。
 新たな着想を得た具体的な場面は社内会議や業務中のひらめき、取引先との会話などが目立った。日常空間やメディアの情報といった私生活の一こまを挙げる回答も多かった。
 調査は昨年10月、県内企業千社を対象に行い、296社が応じた。
(経済部・河村英之)

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