落語会、密避け再開 安心して笑える新形態を模索

 新型コロナウイルスの影響で休止が相次いでいた静岡県内各地の小規模な落語会が、行動制限の緩和もあり、再開し始めている。県外から演者を招くことや、観客に高齢者が多いことから、これまで感染防止を理由に再開をためらう主催者が少なくなかった。主催者はコロナ禍に対応する新たな形態を模索し、地域に根ざした笑いの場を残そうと奮闘している。

観客はマスクを着用し、客席は通常の半分に制限して再開した「まちなか寄席」。観衆は立川志らべさん(右)の話芸に聞き入った=5月22日、沼津市大手町の大手町会館
観客はマスクを着用し、客席は通常の半分に制限して再開した「まちなか寄席」。観衆は立川志らべさん(右)の話芸に聞き入った=5月22日、沼津市大手町の大手町会館

 沼津市大手町の会場で5月22日、丸2年ぶりに開かれた「まちなか寄席」。2年前、緊急事態宣言の発令で中止になった回に出演予定だった落語家立川志らべさん(46)=伊豆の国市出身=が高座に上がり、会場に集まったマスク姿の市民を笑わせた。
 これまで100人前後が来場していたが、今回は入場を70人に制限しても集まったのは50人ほどだった。主催するNPO法人まちづくりセンターぬまづの河辺龍二郎理事長(81)は「常連に高齢者が多いので、感染を恐れて二の足を踏んだ人も少なからずいる」と残念がる。それでも「50人は来てもらえた。今後の手応えを感じた」と前を向く。
 磐田市で20年続く「藤田亭寄席」も4月、2年ぶりに再開した。主催する藤田保幸さん(73)は「常連から『いつになったら再開するのか』と言われていた」と明かす。一方、これまでの会場だった自宅敷地内での開催は会場の密を避けて見送り、近くの公共施設を借りて実施した。地元出身の若手落語家を応援するために始まった会だけに「若手は落語会が減り、芸を高める場も奪われている。今後も可能な限りやっていきたい」と意気込む。
 ■一時は開催ゼロに
 東海地域の落語情報紙「東海落語往来」編集人の金沢実幸さん(55)=磐田市=によると、新型コロナウイルスの感染拡大で最も落語会が減ったのは、2020年5月で、県内の開催がゼロだったという。その後は感染状況に応じて一進一退の状態が続いたが、今年3月以降は再開が目立つようになった。
 ただ、コロナ禍前の水準には戻っていない。「医療や介護職など、今も不特定多数の人と接しづらい主催者の会や、飲食店が食事付きで開いていた会は、まだ休止するケースが多い」と指摘する。
 加えて感染拡大の状況が見通しづらく、告知から開催までの期間が短くなっているといい、「情報が伝わりづらく、新規客の獲得が難しくなっている」と今後の課題を挙げた。

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