「二人きりに」つきまとい しつこい支援者に疲弊【地方議会と女性 第2章 活動の環境㊥】

 静岡県内の50代女性市議、遥さん=仮名=は10年ほど前、初挑戦した市議選で支援者の男性にしつこくつきまとわれた。「大事な話があるから食事に行こう」「二人きりになりたい」。選挙戦を挟んで4カ月ほどの間、ほぼ毎日メールを送り付けられ、内容も性的なものにエスカレート。断り続けると「誰のおかげで当選できたと思っている」とすごまれた。

遥さんがつきまといの被害を受けて設置した防犯カメラ=5月、静岡県内
遥さんがつきまといの被害を受けて設置した防犯カメラ=5月、静岡県内

 選挙後には自宅に無断で侵入され、室内で鉢合わせた。他にも何者かが留守宅に侵入した形跡があったり、郵便物を抜き取られたりする被害が重なり、警察に相談。自宅に監視カメラを付けた。男性に対しては弁護士を立て、直接連絡しないよう強く求めると行為は収まった。
 男性は地元で選挙応援の経験が豊富で、「ノウハウを知っている」と協力を申し出てきた。遥さんは市外出身で、地域活動を通じて高齢者の悩みに触れるうちに議会に関心を持った「地縁も組織もない新参者」。ありがたく頼り、選挙中は行動を共にした。
 「決裂すれば結果に影響する。選挙が終わるまでは人間関係を断つような拒絶はできなかった」。経験に懲りた遥さんは、2度目以降の選挙は知人に後援会長を頼み、スタッフも女性中心に変えた。
 遥さんの所属議会は女性議員の割合が県内市町の平均以下。地元について「女は男に従うべきという古い意識が根強く、女性が低く見られがち」と痛感している。「そういう空気がハラスメントの温床になるし、政治に参画しようという女性の意欲をそいでいる」
 浜松市議として5期目を務める鈴木恵さん(60)は、20年以上前、会合のために訪れた飲食店で、偶然行き会った市の幹部職員に抱きつかれ、キスされた。鈴木さんは当時の市長に調査と処分を訴え、職員は減給1カ月の懲戒処分を受けた。
 「自分が誘ったんだろう」「その程度で騒ぐな」。処分が公表されると、事務所の電話にはいわれのない匿名の批判が相次いだ。「守ってくれる人はいない。自分で対処するしかなく、怖かった」
 組織の後ろ盾もなく30代半ばで議員になり、被害当時は「仕事上で関わるさまざまな人から、有形無形の嫌がらせを受けていた」。悔しさからがむしゃらに学び、志を共にする仲間づくりにも励んだ。期を重ねると、嫌がらせはやんでいった。
 浜松市議会は女性議員が増え、活動環境は格段に改善した。だが「全国的には、特に組織のない女性議員に対するハラスメントは相変わらず」だ。「議会にも事務局にも男性が多い中、訴えても対応は多数派寄りになりがちで、訴えた側が逆に傷ついている」

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞