時論(6月19日)サクラエビ産業再生の起点に

 駿河湾のサクラエビ春漁が終わった。水揚げ量202トンは前年の4割増。「資源は回復基調」という見方があるが、気を緩めてはならない。
 大学教授らによる「サクラエビ再生のための専門家による研究会」は2021年の提言で、資源回復がみられても漁獲上限は200トンと示した。この春漁が再生の起点になることを願う。
 不漁が深刻化した18年春漁でさえ、漁獲は312トンあった。同年秋漁以降は、網を入れる前に群れを調べて稚エビや産卵直前のエビは取らないなど漁を抑制した。自主規制をしなかったらもっと取れたかもしれないとは考えず、専門家の知見を取り入れた資源回復への取り組みを継続してほしい。
 不漁続きで価格は高騰し、消費者離れが懸念されたが、今年の春漁の平均価格は1ケース(15キロ)当たり5万2千円と前年比約3割下落し、適正相場に向かいつつあるという声が聞かれる。
 資源が回復基調にあるなら、早急に、乾物や飲食など関連産業全体の持続化策を講じる必要がある。漁業者と商工業者との連携強化は欠かせない。
 水揚げされる静岡、焼津両市には、漁業者、商工業者の奮闘ぶりを市民、観光客に伝える施策充実を求めたい。
 今回の不漁問題で、サクラエビの産卵海域に注ぐ富士川水系の上流に化学物質を含む産業廃棄物が不法投棄されていたことが判明した。海洋資源の危機を、河川環境を含めて俯瞰[ふかん]することができた。水や川底の泥の検査が行われたが、重要なのは堆積した汚泥の除去と、不漁との因果関係の究明だ。
 サクラエビ産業の持続化は、漁業振興と生態系保全の両面から進めなければならない。どちらも所管する県の当事者意識と本気度が問われる。
 

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