マスク外せず部活ジレンマ 試合で濃厚接触、棄権リスクも 高校バスケ

 新型コロナウイルス「第6波」が落ち着き、屋外のマスク着用などが緩和される一方、学校スポーツは今も厳重な感染対策を続けている。感染対策をコロナ以前の生活の再開にどのようにつなげていくかは、参院選の争点の一つにもなっている。教育現場として「生徒の健康」は最優先。ただ、対策が本来の趣旨や社会情勢にそぐわない場面も増え始めた。ジレンマを抱えたままコロナ禍は3年目の夏を迎える。

県高校総体バスケットボールの試合風景。コートを駆け回る選手はマスクを着用している=5日、袋井市のエコパアリーナ
県高校総体バスケットボールの試合風景。コートを駆け回る選手はマスクを着用している=5日、袋井市のエコパアリーナ


 今月上旬の県高校総体バスケットボール会場では、多くの選手がマスク姿でコートを走り回っていた。屋内で身体接触を伴うとはいえ、持久力が必要な競技では異例。県バスケットボール協会の関係者によると、特に第6波が拡大した昨冬以降は着用するチームが「激増した」という。
 発端とされるのは2020年12月の全国高校選手権。対戦チームの関係者に感染者が出た男子の開志国際(新潟)が、日本協会の指示で大会を棄権した。同校の選手も濃厚接触者になる可能性があったためだ。
 政府方針では体育の授業や運動部活動はマスク不要。プレー中の着用を求めるような規定はない。だが、マスクの有無は濃厚接触の判定基準であり、県高体連のガイドラインは「濃厚接触者は待機期間中、大会に参加できない」としている。
 「棄権リスク回避の意味合いが強い。開志国際の影響は大きかった」。県西部の女子強豪校の監督は正直な心境を吐露する。感染対策以上に、出場辞退や待機措置を防ぐため、着用を余儀なくされているのが実情だ。
 今後、気温が上がれば若年層にとってコロナより重症化の危険がある熱中症のリスクは高まる。県中部の強豪校の男子部員(3年)は「慣れても息苦しさなどの違和感はあり、運動量も少し落ちる」と影響は感じつつも、それ以上に濃厚接触を回避できる安心感があるという。
 政府は熱中症予防のため、あらためて体育や部活動での「着用不要」の徹底を全国に呼び掛けているが、この高校の監督は「せめてプレー中の接触は濃厚接触と扱わないなどの対応がなければ、なかなか外せないのではないか」と話した。

 ■競技も観戦も 厳格対応 いつまで
 大会観戦を巡っても厳格な対応が続く。7月から本格化する県中学総体は一部の屋内競技で入場を生徒や顧問、関係者に限定する方針。感染防止を重視した判断だが、3年間、一度も会場で応援できない保護者からは戸惑いの声が漏れる。
 県中体連のガイドラインは「原則生徒1人につき保護者2人」が入場可能としているが、詳細は会場の広さや運営体制を踏まえ、各競技で決める。
 水泳の地区大会は現時点で無観客開催。参加者が多く、選手が待機する観客席の間隔確保や、限られた人員を生徒の感染対策に充てる必要があるという。県中体連の竹内哲雄理事長は「安全安心が第一。生徒への配慮が手薄になっては本末転倒」と理解を求める。
 これに対し、伊東南中の水泳部父母会は、県教委や県中体連に見直しを求める要望書を提出した。岩本佑太会長(39)は、入場を3年生の保護者に限定するなど「観客を可能にする方向で議論してほしかった」と指摘。プロスポーツなどで入場制限が緩和される現状を踏まえ、「子どもたちもコロナに対する社会の変化に気付いている。教育現場もゼロコロナから変わってほしい」と訴える。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞