富士山御殿場口「登りやすく」 新6合目の山小屋20年ぶり復活

 富士山御殿場口新6合目の山小屋が20年ぶりに復活する。登山の起点となる新5合目から6時間にわたり休憩場所のない状況が解消される。玄人向けとされる御殿場ルートが「一気に登りやすくなる」と関係者は期待する。

20年ぶりに営業する富士山御殿場口新6合目の山小屋「半蔵坊」(橋都彰夫さん提供)
20年ぶりに営業する富士山御殿場口新6合目の山小屋「半蔵坊」(橋都彰夫さん提供)
半蔵坊から見える御来光と山中湖(同)
半蔵坊から見える御来光と山中湖(同)
20年ぶりに営業する富士山御殿場口新6合目の山小屋「半蔵坊」(橋都彰夫さん提供)
半蔵坊から見える御来光と山中湖(同)

 標高2590メートルに位置する山小屋「半蔵坊」は約40平方メートル、宿泊定員12人。7合4勺(しゃく)の山小屋「わらじ館」を営む元警察官の橋都彰夫さん(63)=御殿場市=が運営する。
 2011年からわらじ館を運営する橋都さんは、御殿場ルートを登りやすく環境に優しい道にしようと模索していた。4年前に「半蔵坊」の建物所有者が受け継ぎ手を探していると聞き、名乗りを上げた。20年間で建物を覆った土砂を除去し、内部を改装した。
 新5合目(標高1440メートル)から4時間~4時間半で到達する。新5合目近くの大石茶屋からわらじ館(同3090メートル)まで休憩場所がなかったこれまでに比べて「家族連れや団体も登りやすい」と橋都さん。ごみや排せつ物の減少にもつながるとみる。
 橋都さんは「山中湖が近く、御来光と一緒に見られる」と半蔵坊の立地の良さをPRする。「小さな山小屋だが、おいしい食事と温かいサービスを提供したい」。雲上のもてなしに力を入れ、一生に一度のつもりで御殿場ルートに挑む登山者をリピーターにするつもりだ。

雄大さ実感「地獄の道」

 御殿場ルートは他の登山ルートに比べ登頂に要する時間が長く、「地獄の道」とも称される。橋都さんは、標高3000メートル前後まで広がる砂地は「母親の懐に入ったような感覚になる。富士山の広さ、雄大さを実感できる」と魅力を語る。
 御殿場市などによると、御殿場口新5合目から山頂までの所要時間は8~9時間。次いで長い須走ルート(5合目から)は5時間40分。富士宮ルート(同)や吉田ルート(同)は御殿場ルートの2分の1程度という。
 登山者数は長年、他の3ルートに水をあけられていたが、近年はスカイランニングのコースとして人気が高まる。環境省がまとめた2021年の開山期間中の登山者数は、須走ルートに肉薄した。
 山小屋は登山者の宿泊や休憩の場だけでなく、荒天時の避難所や有事の対応拠点にもなる。御殿場市観光交流課は、半蔵坊の営業により「御殿場ルートの登山者の安全性が高まる」と歓迎する。ただ、最難関ルートには変わらず、十分な準備と適切な装備で登るよう呼びかける。


 

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