文化芸術への思いつなぐ 磐田市の有志ら 旧市民文化会館の記念誌発行

 現代舞踊作家の佐藤典子さん(90)ら磐田市の文化芸術、経済分野の有志が、移転建て替えした新市民文化会館が30日にオープンするのを前に、2020年3月に閉館した旧会館(同市二之宮東)の歴史や関係者の思い出をまとめた記念誌を発行した。41年間にわたって数々の舞台公演が繰り広げられた旧会館。紡がれた市民らの文化芸術への思いを次代に引き継ごうと、約1年半かけて完成させた。

旧磐田市民文化会館の歴史や思い出をまとめた記念誌を発行した佐藤典子さん(中央)ら=7月上旬、同市内
旧磐田市民文化会館の歴史や思い出をまとめた記念誌を発行した佐藤典子さん(中央)ら=7月上旬、同市内

 「新型コロナウイルス禍でお別れの会も開けなかった。せめて『ありがとう』の気持ちを込めて記録を残したい」。旧会館で数多くの作品をプロデュース・監修した佐藤さんが、市内の文化芸術活動を支えてきた財界人らに呼び掛け、編集委員会を発足させた。
 メンバーは1979年の開館当時の記事や公演の記録などの資料集めに奔走。磐田から世界への文化発信を掲げたクロスオーバーコンサート、磐田こどもミュージカルなど、さまざまな舞台公演の出演者、スタッフ、観賞した市民らには、思い出やエピソードの寄稿を募った。
 記念誌はA4判1007ページ。約30人が公演の感動や旧会館への感謝をつづった寄稿のほか、代表的な公演のポスター写真、裏方として支えた照明・音響スタッフの座談会などを掲載した。年表には、旧会館で開催されたほぼ全ての公演・事業を記録した。
 編集長を務めた自営業乗松保臣さん(68)は「舞台に関わった多くの人たちの情熱を感じた。その活力が41年の歴史につながったと再確認できた」と話す。350部作製し、市内の図書館などに寄贈した。
 月末には新たな市民文化会館「かたりあ」(同市上新屋)がオープンする。佐藤さんは「舞台芸術は人間の心を育てる。市民が人間らしく生きていくための文化の拠点であり続けてほしい」と期待を寄せた。
 (磐田支局・八木敬介)

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