彫刻表現の成果を総覧 建築家・川口宗敏さん(静岡市)、写真集を発刊

 静岡文化芸術大名誉教授の建築家川口宗敏さん(73)=静岡市清水区=が、過去40年間の自作の彫刻やモニュメントを集めた写真集「宗敏の芸術美」(静岡新聞社)を発刊した。建築設計や都市デザインを手がける中で高まった芸術への探究心、彫刻表現への興味関心を、自らの手による写真で総覧した。

自宅アトリエで創作にいそしむ川口宗敏さん=7月上旬、静岡市清水区
自宅アトリエで創作にいそしむ川口宗敏さん=7月上旬、静岡市清水区

 約10年前から制作した、白大理石にさまざまな女性の表情を刻んだ「ミューズ」3部作の完成を機に発刊を決意した。2012年の建築集「川口の空間美」(同)の続編。「静岡県わかふじ国体炬火[きょか]台『炎輪』」(03年)、静岡市呉服町通りのベンチやアーチ(1995、96年)、「浜松モザイカルチャー世界博」に出品した「紅雲の雪景富士」(2009年)など、県民の目に触れる機会が多い作品を選んだ。分かち難く、時に重なり合う建築と彫刻、それぞれの領域を往復した成果が凝縮されている。
 「1990年に静岡市立芹沢銈介美術館の収蔵庫を任された際に、疑似窓を取り入れた彫刻的な発想で勝負できた。モニュメントに具象的なニュアンスが加わった」
 74年、名古屋工大大学院建築学科修了後に渡米し、革新的な都市設計で知られる建築家パオロ・ソレリの事務所で、建築とアートの境界線を越える発想に接した。77年にハーバード大大学院に入学。都市デザインを学び、学内の芸術資産にも大きな刺激を受けた。
 帰国後、公園設計、都市計画を受託したことがモニュメント設置の機会を生んだ。原寸の石こう原型を作り、愛知県の石工に石彫を委ねるのが制作の基本形という。
 「シンボライズが求められる案件を任されたこと、腕のいい石工との出会い、静岡県の設計事務所で仕事をしていたこと-。さまざまな要素が重なって作品が生まれた。振り返れば、とても運が良かった」
 (文化生活部・橋爪充)

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞