子どもに笑顔お届け! 浜松の放課後支援員・稲津さん 大病後「地域に恩返し」

 浜松市南区の放課後児童会支援員稲津達義さん(55)が、自費で収集したカードやボードゲームなどコンピューターを使わないアナログゲームを小学生や未就学児に楽しんでもらう取り組みを、市内を中心に続けている。新型コロナウイルスの影響で巣ごもり生活時の娯楽として注目されたこともあり、今夏も小学校や公共施設などをボランティアで回る。大病を患ってたどり着いた「地域への恩返し」は、子どもの笑顔が広がる街づくりに一役買っている。

アナログゲームで遊ぶ子どもらの様子を見る稲津達義さん(中央)。地域への恩返しをしようと活動に励む=7月下旬、浜松市浜北区
アナログゲームで遊ぶ子どもらの様子を見る稲津達義さん(中央)。地域への恩返しをしようと活動に励む=7月下旬、浜松市浜北区

 7月下旬、同市浜北区のふれあい交流センター浜北。稲津さんは家族連れにボードやカードを使う遊びのルールを説明していた。木製の駒や円形の紙を、バランスを取りながら積み上げるフランス発のゲームに挑戦した同市東区の小学2年伊藤紗和さん(8)は「普段はスマホのゲームをするけど、こういう遊びも楽しい」と笑顔。アナログゲーム講座を主催した同センターの田中育美事務長は「コンピューターゲームと違いお年寄りから子どもまでが手を使って遊べる。世代間の交流にもつながる」と手応えを感じた様子だった。
 稲津さんが約4年前、地元小学校の放課後児童会支援員に就いたのを機に市内の販売店などで集めたアナログゲームは40種類以上。「大人は子どもと同じ目線になれる。子どもはルールを守るのを通じて社会性が養われる」と魅力を語る。
 住宅関連の会社員だった2013年、腹部の激痛に襲われた。悪性リンパ腫だった。入退院を繰り返し、脱毛や味覚・嗅覚障害を経験。クリーンルームから出られない時期もあった。
 闘病後に参加した生涯学習の成果発表会でアナログゲームの遊び方を披露すると、地元以外の協働センター職員らに注目され、コロナ禍以降は講師の依頼も増えた。「家族に見守られ、つらい病から何とか復帰した。今度はみんなが笑顔になれるお手伝いをしたい」と活動する。
 「地域のちょっと変な面白いおじさん。そんな風に思ってもらうのがいまの目標だ」。マスク越しの優しい表情が、子どもらを引きつける。

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