静岡市葵区に新拠点を開設 アニメ新旧技術を融合 制作会社「シャフト」社長/久保田光俊氏【本音インタビュー】

 「魔法少女まどか☆マギカ」「3月のライオン」など多くの人気アニメーション作品を手掛ける制作会社シャフト(東京)が、静岡市葵区に「静岡スタジオAOI」を設立した。地方都市に設けた新拠点の狙いを聞いた。


 -スタジオ開設のいきさつは。
 「アニメ制作のデジタル化や技術の進歩、通信環境の向上で、オンラインのやりとりに不自由がなくなった。さらに、新型コロナウイルス禍を受けて約2年間、テレワークを進めた結果、東京の本社から離れた場所でも十分に仕事ができるという手応えを得た。静岡は都内から近く、住みやすく、働きやすい。本社から『隣のスタジオに行ってくれ』というぐらいの感覚で行き来できる」
 -新拠点の役割は。
 「日本ではまだ導入が進んでいない世界基準の制作ツールを用いて、コンピューターグラフィックス(CG)アニメと手書きの『2Dアニメ』のハイブリッド(組み合わせ)を進める。海外では主流になったフルCGに手書きのアニメの良さを残す方法論を研究開発する。東京でやっていることとは違った形で進化していきたい」
 -スタッフの拡充をどう進めるか。
 「東京から作画などを担当する3人が移り、県内で2人を新規採用して業務を開始した。毎年県内の新卒を採用し、最終的に二十数人の規模に持っていきたい。地元で絵やデザインを学ぶ学生の進路の選択肢が増えたらいい。一方で、このスタジオの新しい取り組みに興味を持ってくれた人が世界中から集まってほしいとも思っている。静岡のスタジオで完成させた作品が世に出るのも、そんなに先ではないだろう」
 -自身とアニメとの出合いや関わり方は。
 「テレビ放送が盛んになり始めた“アニメ創世記”をリアルタイムで体験した世代。中学生の時にブームだったのが『宇宙戦艦ヤマト』だった。特に『あしたのジョー』『エースをねらえ!』の出崎統監督の色使いや演出に引かれた。『海のトリトン』も好きで、後に(ガンダムシリーズの)富野由悠季監督の作品と知った。アニメ・漫画少年が制作会社に巡り合い、続けてこられたのは、好きな仕事をやりたいという強い気持ちがあったから。技術の進化や仕事のスタイルの変化も楽しめている」

 くぼた・みつとし 旧菊川町(現菊川市)生まれ。1982年シャフト入社。仕上げ部で色彩設定や特殊効果などを務め、95年から制作担当。企画・プロデューサーを経て2004年から現職。62歳。

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