リニア工事残土どう処理 静岡県条例で「要対策土」原則盛り土禁止に JR東海「適用除外」念頭

 熱海市の土石流災害を受けて県盛り土規制条例が7月に施行されたことで、リニア中央新幹線南アルプストンネル工事で発生する残土の処理方法に注目が集まっている。自然由来のヒ素などの重金属を含み、汚染対策が必要とされる「要対策土」の盛り土が原則禁止されたためだ。JR東海は、適切な措置が講じられていると知事が認めれば例外的に盛り土を可能とする「適用除外」を受けることを念頭に現地での存置計画を維持したい考えだが、県は「具体的に協議しているわけではなく(適用除外と)判断できない」と慎重な姿勢を崩していない。

JR東海が示しているリニア工事残土置き場
JR東海が示しているリニア工事残土置き場

 「これまでのJRの説明では処理できなくなる」。県の難波喬司理事は2日、都内で開かれた国土交通省専門家会議会合後の記者会見で、JR東海の要対策土処理計画への考えを問われ、きっぱりと答えた。
 JRは静岡工区のトンネル掘削工事で発生する残土について、すべて大井川上流域の川沿いに永久存置する方針を示している。要対策土については藤島沢(静岡市葵区)に置き場を設ける計画で、有害物資が漏れ出し、大井川の水質に影響を与えないようにするための盛り土構造について県有識者会議で協議している。
 県は条例の「適用除外」を受けるための要綱を定め、厳格な有害物質流出防止措置や管理の継続性、モニタリング体制の整備などを規定している。要綱では、盛り土ができる場所を「事業区域内」と定めるが、県は工事箇所(千石ヤード地点)から6キロほど下流の藤島沢が区域内と言えるのか「現状の事業計画では認められない」(担当者)とみている。
 JR東海中央新幹線静岡工事事務所の永長隆昭所長は「条例の原則と適用除外がある。具体的な条件を出して県と話していきたい」と語る。

 ■JRの存置計画 流域住民不安 
 リニアトンネル工事静岡工区で発生する残土すべてを大井川上流域に置くJR東海の計画を巡っては、流域の住民や利水者からも不安の声が上がる。
 島田市の茶農家紅林貢さん(74)は「水質悪化の恐れがあると世間に認知されるだけで大きな風評被害を受ける」とした上で、「JRは流域住民の声に耳を傾け、よほど慎重に対応してもらわないと困る」と訴える。
 大井川から取水し、菊川市や掛川市の農地に供給する大井川右岸土地改良区の浅羽睦巳事務局長は「流出してから『想定外だった』と言われても、取り返しがつかない。専門家の意見をよく聞いて、より踏み込んだ対策を」と求める。

 <メモ>JR東海はリニア南アルプストンネル工事静岡工区で約370万立方メートルの残土発生を見込み、燕(つばくろ)沢など大井川上流部の6カ所に置き場を設ける計画を示している。同工区での要対策土の発生量は数値を示していない。県有識者会議の委員は「そもそも水源地に有害物質を含む盛り土を永久存置するのは不適切」として、有害物質を土から分離する「オンサイト処理」の現地実施を求めている。一方、JRは設備を置く敷地が確保できないことなどを理由に応じていない。

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