介護施設で児童預かり 浜松市、全国初の「寺子屋」

 夏休み中に高齢者施設が小学生を預かる浜松市の「かいごTERAKOYA(寺子屋)」事業が7月下旬、市内5施設で始まった。施設が高校生や大学生をアルバイト雇用し、学生らが児童に勉強を教えたり、高齢者との触れ合いを手伝ったりする全国初の試み。活気がもたらされた施設側や、子どもの預け先に悩む共働き世帯から好評を得ている。

施設で高齢者と触れ合いながら過ごす児童たち=7月下旬、浜松市中区の浜松中央長上苑
施設で高齢者と触れ合いながら過ごす児童たち=7月下旬、浜松市中区の浜松中央長上苑

 市が実施施設を募集し、予算500万円で事業化した。その一つ、特別養護老人ホーム浜松中央長上苑(中区)は会議室を開放。8月26日までの平日に、毎日4人ほどの学生が10人程度の児童を預かる体制を組んだ。児童は時間割に沿って勉強や遊び、入所者との交流をして過ごす。
 保護者の負担は菓子代程度。小学生の子を持つ施設職員や近隣の住民に知らせると、10~15人の想定に対して25人の申し込みがあった。利用した飲食店員の女性(40)は「学童保育は条件が厳しくて利用できず、毎年夏休みには働けなかった。本当に助かる」と感謝した。
 アルバイトには看護科の高校生をはじめ、医療や福祉分野に関心のある学生が集まっている。学生への報酬は市が負担する。安全確保のため、施設職員が補助するなど人手はかかるが、施設独自で保育を運営するよりはるかに効率的だという。
 増田公基施設長は「高齢者が明るく元気に過ごしている施設の実情を、多くの人に見てもらう機会になる。子育て世帯の役に立てるのもうれしい」と利点を強調した。
 市によると、少子高齢化で2025年度には市内で介護職員が約2200人不足すると見込まれている。介護保険課の大村貴弘専門監は「多様な世代が一緒に過ごす共生型サービスに向けた取り組み。介護の仕事を身近に感じ、担い手を目指す若者が増えてほしい」と期待を寄せた。

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