家業後継者らネットワークづくり 浜松で動き 交流の場、変革へ悩み共有「勇気づけられた」

 創業100年を超える“長寿企業”が世界各国に比べて多いとされる日本。デジタル化など激変する社会の中で急成長するスタートアップ(新興企業)が注目されがちだが、家業を受け継ぎ、地域経済を支える企業も欠くことができない存在だ。こうした家業の後継者や承継予定者によるネットワークづくりが浜松市で始まっている。特有の悩みの共有や時代に合った社業変革への意識向上につなげるのが狙いだ。

家業後継者や予定者が家業の強みの生かし方や事業のイノベーションをテーマに意見を交わした会議=8月上旬、浜松市中区
家業後継者や予定者が家業の強みの生かし方や事業のイノベーションをテーマに意見を交わした会議=8月上旬、浜松市中区

 「自分が何とかしなくてはと腹をくくったが、縛られていいのかとの葛藤がある」「経営のベースとパーツがあり、起点にできるのは家業の強み」。
 8月上旬、同市中区で自動車部品製造や養蜂、食品、繊維、不動産など、30~40代を中心とした家業の後継者ら約20人が集まった。中には明治や大正期に創業した老舗企業もある。先代との経営方針の違いやリーダーシップの発揮方法などについて、参加者は本音ものぞかせながら活発に意見を交わした。
 企画したのは次世代の人材育成を目指す市内の一般社団法人「OWNWAY」。全国の家業後継者のコミュニティーづくりや伴走支援を展開する団体「家業イノベーション・ラボ」と共催した。次期後継者の立場で参加した浜松市中区の「共栄建設」の松井大樹さん(37)は「変革に挑戦する経営者との交流で背中を押され、勇気づけられた」と感想を述べた。
 新型コロナウイルス禍やDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速、脱炭素への対応といった社会経済の転換期を迎え、地域企業も投資や事業の創出など新たな取り組みが求められている。そこに歴史を重ねてきた家業後継者ならではの経営判断のプレッシャーも加わる。
 OWNWAYの杉山真之介代表理事(28)は参加者の気づきを促し、課題解決の一歩になることを期待する。「良き伝統を継承し、新たな挑戦に動く人たちのポテンシャルを感じる。継続開催でネットワークを広げ、次の家業イノベーターを生み出したい」と語る。

 <メモ>帝国データバンク静岡支店によると、2021年の県内企業(分析対象約7500社)の後継者不在率は57・5%と前年比3・2ポイント改善した。コロナ禍での事業環境変化で、高齢代表の企業を中心に後継者を決定する動きが加速した可能性がある。21年に事業承継した事例では、先代経営者との関係からみると子供や親族など「同族承継」で引き継いだ割合が52・7%を占め、全国の38・3%と比較して高い。

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