ウクライナ侵攻半年 戦地に目を向けて 国境なき医師団日本元会長 加藤寛幸さん(静岡市葵区) 現地で支援活動「弱者が苦境」

 ロシアのウクライナ侵攻開始から24日で半年。現地ではこの間、国境なき医師団日本の元会長、加藤寛幸医師(56)=静岡市葵区=が医療支援活動に取り組んだ。加藤さんは世間の関心が戦争の長期化による自身の生活への影響に移りつつあるとして、「破壊や暴力を許してはいけない。世界で起きていることに目を向けて」と呼びかけた。

地元NGOと連携した避難所の診療活動=6月、ウクライナ・イワノフランコフスク(加藤寛幸さん提供)
地元NGOと連携した避難所の診療活動=6月、ウクライナ・イワノフランコフスク(加藤寛幸さん提供)

 加藤さんは4~6月、ウクライナ西部イワノフランコフスクの病院で医療ニーズを調査し、短期間に多くの負傷者が運ばれてきた時の対応を指導した。学校などに設けられた避難所も巡って診察した。
 ウクライナ入りの直前には現地の飛行場が攻撃され、滞在中にも多い時で1日5回ほど空襲警報が鳴ったが「街は穏やかな空気が流れ、意外だった。明日が保証されていないことを知っているからこそ、家族との時間を大切にしているように見えた」と振り返った。
 医療体制は「何とか持ちこたえている状態」。前線から離れたイワノフランコフスクの病院にさえ、1日100人近い負傷者が運ばれてくることもあり「今後さらに長期化すれば、医療体制が維持できなくなる可能性が高い」と指摘した。
 経済的に余裕のある避難者が避難先でアパートを借りて生活を始める一方、高齢者や障害者、母子家庭などは避難所生活を強いられていた。こうした人たちは戦時下で定期的な受診ができず、持病を悪化させている様子がみられたという。「立場の弱い人が苦境に追い込まれていた。現地の情報は不確かで彼らへの支援は行き届いていない」と戦闘地域での負傷者の治療に焦点を当てた国際支援の在り方に疑問を呈した。
 国境なき医師団日本からは20日までに、加藤さんを含む9人が派遣され、診察や技術支援を行った。

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