どうする免許返納㊤ 決断する基準は? 周囲のかかわり方は?【NEXT特捜隊】

 「運転免許の返納、いつ決断するべきか悩んでいます」。焼津市の女性(83)から、読者の困り事を調査する「NEXT特捜隊」にお悩みの声が届いた。 運転免許返納が頭をよぎるものの、買い物や通院に車が必要で踏み切れないという。高齢ドライバーによる交通事故対策を盛り込んだ改正道交法の施行から3カ月。 決断のポイントや家族が注意すべき点を取材した。
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「ウインカーを間違う」「車庫入れでこする」要注意

 免許返納を検討すべきタイミングはどんな時なのか。警察庁は啓発リーフレットで要注意の症状として「右左折のウインカーを間違って出したり忘れたりする」「カーブをスムーズに曲がれない」「歩行者、障害物、他の車に注意がいかない」「車庫入れの時、塀や壁をこすることが増えた」などの具体例を示している。
 静岡県警によると、昨年の県内の自主返納は1万8635件。過去5年間は1万5000~2万1000件で推移し、全体の95%超を65歳以上の高齢者が占める。昨年末時点での返納理由は「身体機能の低下を自覚した」が最多の42.0%だった。

 

自覚しづらい能力低下も 周りの確認必要

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 ただ、加齢とともに低下する能力の中には自覚しづらいものもある。高齢者の運転適性評価に詳しい千葉県立保健医療大の藤田佳男准教授(56)によると、視野の狭まりや脳の情報処理速度の低下は、症状が徐々に進行するため自覚が難しい。

  photo01 千葉県立保健医療大の藤田佳男准教授  

 藤田准教授によると、脳が処理できる視野範囲「有効視野」が狭くなると、特に視野の端にある交通状況を把握しづらくなる。脳の処理速度の低下はハンドル操作やアクセルとブレーキの踏み替えの遅れにつながり、事故のリスクを高めるという。車に傷を付けてしまうようなケースが増えているなら能力低下の一つの兆候と指摘する。
 このほか「事故にはつながらなかったが危険を感じる『ヒヤリ・ハット』の経験が以前より増えた」「運転して疲れるようになった」などと高齢者自身が感じている場合も身体能力が低下している可能性があり注意が必要という。
 藤田准教授は「運転ミス自体が記憶に残っていない高齢者もいる」として、家族など周りの人が高齢者の運転能力を定期的に確認する必要性を説く。
 家族が確認する際のポイントとしては「急ハンドルや急ブレーキなど『急』の付く動作が増えた」「合流が苦手になった」「周囲の交通に合わせて運転することが難しくなった」などを挙げる。

 

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