現職・斉藤氏が5選 熱海市長選 新人の元市議破る 投票率は過去最低

 任期満了に伴う熱海市長選は11日、投開票が行われ、ともに無所属で、現職の斉藤栄氏(59)が新人の元市議泉明寺みずほ氏(51)を破り、5選を果たした。投票率は44・33%で過去最低となった。

5選を決め、花束を手に喜ぶ斉藤栄氏=11日午後10時12分、熱海市清水町の事務所
5選を決め、花束を手に喜ぶ斉藤栄氏=11日午後10時12分、熱海市清水町の事務所

 斉藤氏は政党や団体に推薦を求めず、組織の力に頼らない選挙戦を展開した。巨額の財政赤字解消など4期16年の実績に加え、伊豆山地区の大規模土石流からの復興、持続可能な観光地経営に向けた宿泊税導入などを訴え、市内全域から支持を集めた。
 泉明寺氏は、土石流被害の責任を取ろうとしないとして斉藤氏を批判。多選による弊害も唱えたが、批判票の受け皿になりきらなかった。
 得票総数は13623票。斉藤氏の得票数は9708票、泉明寺氏は3915票だった。5選は熱海市政の最長を更新した。投票率は4年前が無投票だったため、8年前の市長選と比べると15・08ポイント下回った。これまでの最低は2002年の47・94%だった。
 午後10時ごろ、同市清水町の斉藤氏の事務所に当選の一報が届くと、支援者は安堵(あんど)の表情を浮かべ、拍手が湧き起こった。斉藤氏は「私への信任と今後の市政への期待と受け止め、市民に約束したことを力強く前に進めていく」と述べた。

 ■課題は山積み 市政に厳しい目
 実績と知名度に勝る現職斉藤栄氏が5選を果たした。告示前後に、伊豆山の大規模土石流を巡る市長個人の責任を問う刑事告訴や損害賠償請求訴訟の提起が相次ぐなど“逆風”の中での選挙戦となったが、結果的には大差での勝利となった。
 ただ、この結果を現職への強い信任の表れと捉えるのは早計だろう。未曽有の人災への対応に怒りや不満を抱えながらも「途中で放り出されては、かえって困る」などと消極的な理由で投票した市民も少なくない。投票率が過去最低だった上、217もの無効票が投じられた結果を斉藤氏は重く受け止めなければならない。
 伊豆山の問題に加え、新型コロナウイルス禍からの経済・観光の再生、少子高齢化対策など喫緊の課題も山積みだ。選挙戦で「困難から逃げない」と断言した斉藤氏に、市民は厳しい視線を注いでいる。

 ■熱海市長選開票結果
 当 9,708 斉藤栄 59 無現⑤
   3,915 泉明寺みずほ 51 無新
 ▽投票総数13,840▽有効13,623▽無効217

 ■熱海市長略歴
 
斉藤栄氏(さいとう・さかえ) 東京都出身。東京工業大大学院修了。1988年に国土庁(現国土交通省)入庁。米国デューク大で経営学修士を取得し、99年に退職。国会議員2人の秘書を務めた後、2006年の市長選で初当選。熱海市清水町。

 ■泉明寺氏、支援に感謝
 熱海市清水町の泉明寺みずほ氏の事務所では、現職の当選確実の報が伝えられると、支援者に落胆が広がった。事務所に姿を見せた泉明寺氏は「思いがなかなか伝わらず残念な気持ちがあるが、精いっぱい真実と正義をもって戦った」と述べ、支援に感謝した。「結果はしっかりと受け止め、また別の立場で市政に提言していくことができれば」と語った。

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