戦争を語り継ぐ 体験者証言 発信したい【記者コラム湧水】

 戦争を後世へ語り継ぐにはどうしたらいいのだろうか―。8月中旬、明治史料館(沼津市)が小学生を対象に開いた市内の戦争の歴史を学ぶ教室に同行した。戦後約80年が経過して、戦争体験者が少なくなっている中、若者への継承の仕方を改めて考える機会としたい。
 経過とともに、体験者にたどり着けないことも増え、証言の収集と記憶の真実性を担保することは明らかに難しくなっている。私が小学生当時、祖父母だけでなく、地域の戦友会で話を聞けば複数の視点から一つの戦場の様子が見えてきた。ただ、昨今は戦友会員が1~2人ということも珍しくないという。以前の歴史教育は戦争において日本が受けた“被害”に終始していたと想起する。
 ここで外国に目を向ける。オーストラリア人は日本軍による空襲の記憶を受け継いでいるが、日本の若者はオーストラリアと戦争をしたことすら知らない人もいる。日本人は、受けた“被害”のことを知る機会はあるが、行った“加害”についてはよく知っていない。アジア・太平洋地域にもたらした惨劇の学びが日本では足りていないと思える。
 これらはアジア・太平洋地域の人たちとの戦争に対する見方の温度差を生む。日本人は、自分たちがしてきたことを知らない、歴史を学んでいないという温度差。まずは歴史を俯瞰(ふかん)して、知ることが大切だろう。戦争の被害だけでなく加害を含めて何があったのかを、戦争体験者の証言や歴史教育から明らかにしていく必要がある。
 グローバル化が進む昨今、「国際的な日本人」になるために、戦争教育は大きな役割を担うに違いない。他国と断絶して仕事をすることは難しくなっている。世界で仕事をするためにも、働く世代が歴史を知ることが重要だ。地方紙の一記者でありながらも、戦争で何があったのか、戦争体験者の証言を通じて学び、発信したい。

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