望郷の念込めた絵画 焼津に“帰郷” ハンセン病元患者・望月さん遺族、静岡福祉大に寄贈

 焼津市出身で国立駿河療養所(御殿場市)、国立療養所多磨全生園(東京都東村山市)に入所し2012年に亡くなった望月章さんの遺族がこのほど、生前に章さんが望郷の念を込めて描いた作品「駿河からの富士山」を静岡福祉大に寄贈した。20日から同大焼津駅前サテライトキャンパス(同市栄町)で始まる絵画展で公開する。25日まで。

杉原理事長(左)と増田学長(中央)に絵画を寄贈する長田さん=焼津市本中根の静岡福祉大
杉原理事長(左)と増田学長(中央)に絵画を寄贈する長田さん=焼津市本中根の静岡福祉大

 寄贈した作品は縦約28センチ、横約37センチの水彩画で、緑深き山の背後に、雪の降り積もる富士山が描かれている。駿河療養所の入所者と交流する「動物介在活動ぷらす」(三島市)の伊東郁乃代表によると、描かれた時期や場所は不明だが、「駿河療養所からの風景に似ている」という。
 望月さんは生前、絵画が趣味で、風景や動物を描いた多くの作品を残していた。今回の展示会では、遺族所有の作品など約30点が披露される。寄贈作品を除くほとんどが国立ハンセン病資料館(東京都東村山市)に収蔵する予定で、望月さんの作品が一堂に並ぶ機会は最初で最後となる。
 同大(焼津市本中根)で行われた寄贈式では、遺族の長田富美子さんが静岡精華学園の杉原桂子理事長、同大の増田樹郎学長に作品を手渡した。長田さんは「(望月さんは)焼津に戻ることができなかったけど、絵はふるさとに戻ることができた」と感想を述べた。

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