記者コラム「清流」 行政と「お客さま」

 戸籍の書類が必要になり、本籍地の浜松市役所に電話をかけると、電話口の職員に「お客さま」と呼ばれた。丁寧な印象は受けるし、確かに「客」なのだが、どこかしっくりこない。
 沼津市で開かれた「リノベーションまちづくりサミット」のある登壇者が、同じ違和感を口にしていた。市民は行政に「お客さま意識」を持ち続けていいのか、と。サミットには、自らリスクを取って空き家を改修し、新たな事業に取り組んだ人が集っていた。
 「まちづくり」というと、しばしば行政の補助金が付いて回る。しかし、補助金頼みではなく、自ら稼ぐ仕組みを作らなければ、持続可能なまちづくりにはならない。お客さま意識を脱し、リスクを取って自ら動く人を応援するまちこそ、魅力あるまちなのだろう。
 (東部総局・尾藤旭)

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞