記者コラム「清流」 「恩送り」のつながり

 「『恩返し』ではなく、『恩送り』の輪を広げたい」。台風15号で甚大な被害を受けた静岡市清水区に送る大量の支援物資を車に積み込みながら、熱海市伊豆山のボランティア団体のメンバーはそう実感を込めて語った。
 恩返しは、助けてくれた人に直接返礼すること。恩送りは、人から受けた恩を別の誰かに受け継ぐこと。昨年7月の大規模土石流で、伊豆山には全国から多くの人的、物的支援が寄せられた。住民がその恩を忘れたことはない。同時に、心も体も疲れ切っている被災者の気持ちが痛いほど分かる。だからこそ、つながって力になりたい。住民が団体に託した支援物資にはそんな思いが込められていた。
 災害が後を絶たないこの国では、恩送りの輪が無限に広がり続けているのだろう。
 (熱海支局・豊竹喬)

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