3年ぶり国体開催 大会に変革の波 意義は不変【解説・主張しずおか】

 新型コロナウイルス禍で2年連続中止された国民体育大会が、栃木県を舞台に3年ぶりに開催された。大会は今年で第77回となったが、中止を契機に、開催地の財政負担など現行方式での継続に多くの課題が指摘された。日本スポーツ協会は2024年までに新たな大会像を打ち出す方針だ。だが、競技力強化において大会が代え難い役割を担ってきたのも事実。静岡県スポーツ界も久々の開催を通じて現状を分析し、国体の意義を改めて考えたい。

3年ぶりに開催された国体の総合開会式で入場する県選手団。大会は2024年をめどに大きく転換される=1日、栃木県
3年ぶりに開催された国体の総合開会式で入場する県選手団。大会は2024年をめどに大きく転換される=1日、栃木県


 国体は近畿で開催された1946年の第1回以降、数回を除いて47都道府県が持ち回り開催し、現在は2巡目の終盤にある。開催に合わせ競技場を建設するケースが多く、2003年静岡国体は県富士水泳場など複数施設を新設した。今回の栃木も陸上競技場、水泳場、体育館などを一体整備した。これらは地域のスポーツ振興や経済効果につながっているが、数百億円に上る事業費が問題視され、一部で「国体は不要」との声も挙がる。
 一方、大会は中学3年から世界レベルのアスリートまでが、所属や年代を超えて郷土を代表し、競い合うのが大きな特徴だ。多くの中高生は初めて「代表」の重責を感じる機会になり、中高の全国大会とは異なる経験を得るはずだ。同じチームの一員としてトップ選手の立ち居振る舞いを間近に見るだけでも、成長につながる可能性は高い。陸上競技の男子短距離で五輪3大会連続出場の飯塚翔太選手(ミズノ、藤枝明誠高出)は「高校1年で初めて国体の県代表になり、先輩方から多くの刺激を受けた。自分はチーム静岡に育てられたと思っている」と話す。
 また、マイナー競技にとって国体は大きな“晴れ舞台”。財政面でも県の競技力向上対策事業として例年計約1億円が大会に向けた強化費として競技団体に分配されている。県スポーツ協会の石川恵一朗専務理事は「競技によっては国体が普及、育成、強化の活動全般を支えている」と話す。
 日本スポーツ協会は24年に大会名称を「国民スポーツ大会」に改め、持ち回り開催の廃止と立候補制の導入、負担軽減のための会期短縮を検討する。既存施設を活用した広域開催や開催時期の分散も議論する予定で、時代に合わせ、持続可能な大会へ大きく変革される。
 今大会の本県の天皇杯(男女総合)順位は前回の19年茨城国体と同じ17位。今後、大会のあり方が見直される中でも、変わらずに競技力を高める道筋を描くことが求められる。

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