記者コラム「清流」 秘境と言いたくない

 人口約50人の沼津市井田地区は、集落が山と海に囲まれていて、人々が豊かな自然の恵みを生かした地域振興に励んでいる。古墳、池、寺社などがコンパクトに位置し、田畑が海に近接している景色は、人々がこれまで懸命に生きてきた痕跡のようでいとおしく感じる。
 市街地から距離があり魅力が詰まった井田は、私にとって「秘境」という言葉がぴったりだ。地域を紹介する記事で使いたくなったが、話を聞かせてくれた人たちの顔が頭に浮かび、やめた。
 私が興味深く感じた自然と地形も、集落に病院や学校がないことも住民にとっては当たり前。秘境という形容は自分の立場にたちすぎていて一方的だ。伝わりやすさや主観も重要だが、地域に寄り添う表現は欠かしたくない。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞