美食の街浜松へ官民挙げ誘客促進 「日本のサンセバスチャン」なるか

 浜松市は地元産の良質な食材を前面に打ち出し、観光誘客を図る「美食の街」推進事業を官民で加速させる。目指すは世界一の美食の街とされるスペインの大西洋岸、バスク地方の観光都市サンセバスチャン。浜松市は来年の大河ドラマ「どうする家康」を機に、来訪客の増加を見込む。地元でしか食べられない旬の食材を地域資源と位置づけて魅力を発信するとともに、コロナ後の観光振興を見据える。

美食の街・浜松の実現に向けて打ち合わせを重ねる浜松パワーフード学会の秋元健一会長(右)=9月、浜松市中区
美食の街・浜松の実現に向けて打ち合わせを重ねる浜松パワーフード学会の秋元健一会長(右)=9月、浜松市中区
サンセバスチャン
サンセバスチャン
美食の街・浜松の実現に向けて打ち合わせを重ねる浜松パワーフード学会の秋元健一会長(右)=9月、浜松市中区
サンセバスチャン

 全国屈指の日照時間を誇る浜松では、ミカンやジャガイモなど約170種の農産品、ウナギやフグなど約150種の水産・魚介品など幅広い食材が生産され、鮮度や栄養価が高いまま提供できるのが強み。2019年末から「サンセバスチャン化構想」を進める浜松パワーフード学会の秋元健一会長(59)は「浜松には年中、旬の食材がある。質はスペインよりも上だ」と自信をのぞかせる。
 学会はサンセバスチャンを見習い、日本ではタブー視される料理人の間でのレシピ共有を進め、飲食店のレベルの底上げを狙う。市民向けレシピの提供も始めた。シードル(りんご酒)など地元食材を使った現地のアルコール飲料にも着目し、浜松の食用米と水を原料に地元酒蔵が商品化した純米酒「Enshu(エンシュ)」を監修した。提供店の拡大を目指す。
 市も旬の食材を紹介するカレンダーで市民への発信を強化し、飲食店にはメニューの考案を促す。生産者や料理人、加工業者、消費者の交流会や意見交換会を開始し、新たなレシピや楽しみ方を探る計画だ。
 ただ、浜松産食材は評価が高い一方、全国的な知名度やブランド力はいまひとつ。飲食店も家庭も安価な県外産を選ぶ傾向のため、市農業水産課の担当者は「市民にも浜松産の魅力を知ってもらい、誇りの醸成につなげたい」と話す。秋元会長は「世界が認める美食の街をつくりたい。大河ドラマ後もリピーターが来るように旬の料理でもてなしたい」と意気込む。
 (浜松総局・宮崎浩一)

 サンセバスチャン スペインの北部に位置する人口約18万人の都市。自然に恵まれて食材が豊富で、地産地消の料理を提供。食を目当てに世界から多くの観光客が訪れる。串に刺した生ハムやオリーブ、ブルスケッタなど「ピンチョス」と呼ばれる小皿料理は他地域に比べて質が高く、量も豊富。居酒屋「バル」が所狭しと並び、ミシュランガイドの星の数が人口1人当たりで世界一とも言われる。飲食店の弟子制度を廃止し、料理人の間でレシピや調理法を共有し、若手の技術や地域全体のレベル向上につなげている。

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