空自浜松基地「エア・フェスタ」 復活のブルーインパルス「今年も感動を」 墜落事故40年、再開に地元の後押し

 航空自衛隊浜松基地で23日、「エア・フェスタ2022」が開かれる。人気の曲技飛行チーム「ブルーインパルス」の飛行が予定されているが、今年は浜松基地航空祭の墜落事故から40年。事故を目の当たりにした浜松市中区高丘地区などの住民には衝撃的な記憶として刻まれ、当時を思い返す声も聞かれた。

ブルーインパルスが墜落した現場付近=1982年11月14日、浜松市(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ21」から)
ブルーインパルスが墜落した現場付近=1982年11月14日、浜松市(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ21」から)

 1982年11月14日の昼。当時のブルーインパルスは超音速のT2ジェット練習機だった。6機編隊が急降下に入り、5色の煙を吐きながら放射状に広がりかけた瞬間、1機が墜落。ごう音とともに炎と黒煙が上がった。基地内で曲技飛行を見守っていた犬塚利雄さん(82)=同市中区=は「突然、黒煙が立ちのぼり、『まさか』と信じられなかった」と振り返る。
 墜落現場は基地の北約1キロ、民家や工場、倉庫などが立ち並ぶ一角。パイロットの男性1人が死亡し、市民十数人が重軽傷を負ったほか、多数の民家、車両に被害が出た。
 現場から数十メートルの所に住む無職男性(80)は外出先から戻って車から降りた時、落ちてくる機体を目撃した。「晴れた日だったが、爆発音とともに目の前が真っ黒になった」。飛び交う石や機体の破片から反射的に顔を背けたが、眉あたりに何かが当たった。駆けつけた自衛隊救護班によって病院搬送された。
 事故を受け、ブルーインパルスの飛行は中止された。浜松基地で曲技飛行が復活したのは17年後の99年。基地渉外室は「OBの話によると、地元自治会に丁寧な説明を行い、協力団体や住民の後押しもあって復活できたようだ」と説明する。
 現場近くの天野保美さん(74)は事故後、自治会の代表として基地での説明会に参加した。航空機の見学やヘリコプター試乗、懇談会などを通じて自衛隊への理解を深める機会が設けられたという。
 天野さんは「もし、落ちる場所が少しずれていたら…」とぞっとする半面、64年東京五輪の際の「曲技飛行の感動は今も忘れられない」と明かす。「事故がなく、感動を届けてほしい」。今年は自宅から空を見上げる。

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