不登校 まずは親をケア 交流団体、浜松で始動 自由な集いで悩み共有

 不登校の児童生徒が各地で増加する中、その保護者らのケアを目的に、創作活動などを通じて楽しく学び合う試みが浜松市内で始まった。中学生の娘が不登校という鈴木友加里さん(41)=同市西区=が主宰する交流団体「トーキョーコーヒー浜松」。主に保護者の居場所づくりとして活動し、子どもは必ずしも参加しなくていいという方針だ。鈴木さんは「親も子も自由に過ごす中で自信を取り戻していけたら」と期待する。

トーキョーコーヒーの活動として、参加者とともに調理に取り組む鈴木友加里さん(右から2人目)。「子どもの選択を受け入れ、多様性を認められる社会にしたい」と励む=10月中旬、浜松市浜北区のタイニーシード
トーキョーコーヒーの活動として、参加者とともに調理に取り組む鈴木友加里さん(右から2人目)。「子どもの選択を受け入れ、多様性を認められる社会にしたい」と励む=10月中旬、浜松市浜北区のタイニーシード

 10月中旬、同市浜北区の自家焙煎(ばいせん)カフェ「タイニーシード」(旧すいーとまむ)。不登校の経験がある子どもを持つ母親らが、子どもたちと共に笑顔でタマネギをむき、鍋を囲んだ。団体初の本格的な活動はスパイスカレーなどの調理。大人たちが教育について語り合う場面もあったが、深刻な意見交換というよりも楽しげなサークル活動のようだ。
 参加した袋井市の三上望さん(47)は小学6年の長男が一時、不登校となった。心配が募り、子どもを連れて病院を巡るつらい日々を過ごしたこともあるだけに、悩みを共有し、心安らげる居場所のありがたさを強調する。「今後は自分の経験を生かし、活動を手伝いたい」と語る。
 トーキョーコーヒーは「とうこうきょひ」の言葉遊びで名付けられたプロジェクトで、美術大予備校などを展開する奈良県の「アトリエe.f.t.」が今夏に提唱。吉田田タカシ代表の「多様な子どもが苦しまず、自分らしく学べるように」との思いに共感した人が、全国約160の拠点で活動を始めた。
 トーキョーコーヒー浜松は今後、カフェで月に1回程度、料理や染め物などを行う計画だ。鈴木さんは「まずは親の気持ちを和らげたい。その上で子どもの多様な選択を認める社会づくりにつなげられれば」と語る。

 ■不登校増加傾向 静岡県内各地で相談会
 小中学校の不登校の児童生徒は増加傾向にある。文部科学省によると、2020年度は19万6127人(19年度比1万4855人増)。千人あたりの児童生徒数も20年度は20・5人(静岡県は22・9人)と10年間で約10人増加。県内の不登校児童生徒は、県教育委員会によると20年度6377人(19年度比96人増)だった。
 静岡大教職センターの加藤靖特任教授は「不登校の理由や状況は人によって異なり、今は教育現場で学校に無理に来させることはなくなった。トーキョーコーヒーのような活動にも成果を上げてほしい」と話す。県社会福祉協議会によると、不登校の子の保護者に特化した支援活動は県内では珍しいという。
 ひきこもりの成人も含む悩みに対する相談会は、県内各地で随時行われている。県と浜松市の合同相談会は30日、同市浜北区の浜北文化センターで開催する。
 問い合わせは市青少年育成センター<電053(457)2418>へ。
 (浜北支局・松浦直希)

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞