時論(11月6日)大道芸W杯、第30回につなげ

 小説「レ・ミゼラブル」を書いた19世紀フランスの作家ビクトル・ユーゴーは、評判はどうかと旅先の英国から出版社に「?」と1文字の手紙を出した。返信は「!」(売れ行き上々です)。世界一短い手紙として知られる。
 疑問符や感嘆符は明治の言文一致運動で多用され、洋書の輸入や翻訳とともに次第に一般化した。「はてなマーク」「びっくりマーク」は疑問や驚き、強調などを視覚で伝えられる。
 尾崎紅葉は「金色夜叉」の金剛石(ダイヤモンド)が出てくる場面で「あら、金剛石??」と表記した。二つ並べるのは明治時代の文献には他に例がないという(山口謠司著「てんまる」)。これを「あら、金剛石‼」と感嘆符にしてみると、ニュアンスが違ってくる。
 静岡市の大道芸ワールドカップが3年ぶりに開幕した。感動と笑顔、拍手が戻ってきた。新型コロナウイルスの影響により海外アーティストの参加はないが、街に「‼」があふれている。本来1年間かける準備が短期間になり異形となったものの、底力を見た思いがする。やはり、ボランティアの支えと観衆の笑顔なしには語れない祭典だ。
 「カンヌといえば映画祭というように、パフォーマンスといえば静岡に」「大道芸は街の風景ばかりではなく、街を行き交う人々の気持ちを変えていく」。初期の公式ガイドブックの当時の市長あいさつに、文化創造への期待がつづられている。回を重ね、ボランティアで組織する実行委と共催の市の〝二人三脚〟に乱れはないか。良い形で次の第30回につなげるために、原点を振り返ることは有意義だと思う。
 大道芸W杯プロデューサーの差別的発言といい、台風被害対応といい、このところ「?」が多いからでもある。

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