医療田園都市 人材が鍵 誘致へ環境整備に課題 サンフロント21懇話会東部地区分科会

 沼津市で8日開かれたサンフロント21懇話会東部地区分科会は、県立静岡がんセンターの山口建総長、ふじのくに医療城下町推進機構の大坪檀理事長の講演に続き、「ファルマバレープロジェクトが描く未来 医療田園都市構想」をテーマにパネル討論を行った。

「ファルマバレープロジェクトが描く未来」をテーマに行われたパネル討論=沼津市内(東部総局・山川侑哉)
「ファルマバレープロジェクトが描く未来」をテーマに行われたパネル討論=沼津市内(東部総局・山川侑哉)
山口建氏
山口建氏
大坪壇氏
大坪壇氏
「ファルマバレープロジェクトが描く未来」をテーマに行われたパネル討論=沼津市内(東部総局・山川侑哉)
山口建氏
大坪壇氏

 パネリストは山口、大坪両氏と長泉町の池田修町長、日本政策投資銀行設備投資研究所の青山竜文上席主任研究員、感染症迅速診断キットなどを製造するタウンズ(伊豆の国市)の野中雅貴社長。進行役は同懇話会TESS研究員の青山茂シード副社長。
 今後20年に向け山口氏が掲げる「医療田園都市」構想への期待と課題が議論の軸になった。池田氏は過去20年で町の製造品出荷額や所得、公示地価が上昇したデータを示し「ファルマを踏まえたまちづくりで今がある。医療田園都市構想に合わせてエッジの効いた人材が集まるまちづくりを進めたい」とした。野中氏は高度人材の誘致に向け、住環境や副業環境の充実、スタートアップ支援、医療データの集積と利活用を課題に挙げた。
 青山氏はベルギー・フランダースにあるライフサイエンス分野の研究所の成功事例を挙げ「5年間の時間と研究環境を提供し続けることが高度人材集積につながった」と解説した。
 山口氏は「若い高度人材を呼び込むために、県東部地域の教育・文化レベル向上にも心を配っていただけるとありがたい」と呼びかけた。大坪氏はがんセンターへの巨額投資で生まれた良い循環の結果、長泉町のまちづくりが成功したと指摘。「必要なのはお金。県民が資金を集めるファンドを作れないか」と提案した。

 
山口建氏 進化図り理想郷に
 ファルマバレープロジェクトは、医療レベル向上や医療従事者の雇用創出、近隣市町活性化などの成果を地域で上げてきた。今後は患者や企業主体の「医療城下町」を基盤に、住民主体の「医療田園都市」の推進を目指す。静岡県は風光明媚(めいび)で食材が豊富など多様な魅力を持つ。県東部は住んで良し、働いて良し、学んで良し、老いて良し。医療田園都市はほぼ完成していて、さらに進化すれば超高齢社会の理想郷を実現できる。

 
大坪檀氏 高賃金生む雇用を
 県立静岡がんセンターとファルマバレープロジェクトを次の20年につなげるため、世界一の高度付加価値産業集積センターを目指してほしい。長寿化、人口減に伴い税収減と医療費増大が深刻化する新時代を切り抜けるには、高度な頭脳人材を育成し、高賃金を生む雇用が必要。次の10年に向けた世界規模の具体的な数値目標を設定し、強力なリーダーシップを持ち、センター、産業人、経済人、政治家が結束する「小さなEU」を県東部に作るべきだ。
 

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