情熱の自作朗読、息長く 解散の危機越え公演 静岡県中部の愛好家団体「朗読・ラピス」

 静岡県中部の70~80代の文芸愛好家が集まり、自作の詩や句の朗読会を開いている団体がある。指導者の死や新型コロナウイルス禍で解散の危機に陥ったが、11月上旬、3年ぶりの公演を果たし息を吹き返した。

自作の詩を情感込めて読み上げる石上静子さん=5日、静岡市葵区の江崎ホール
自作の詩を情感込めて読み上げる石上静子さん=5日、静岡市葵区の江崎ホール

 「沈みかけた夕陽が赤々とあぜを染め、白や紫の野菊が咲いていた」-。
 愛好家団体「朗読・ラピス」が5日、10回目となる自作朗読会を静岡市葵区の江崎ホールで開き、メンバー8人が思いのこもった作品を情感たっぷりに披露した。節目となる今回を最後と考えていた代表の石上静子さん(87)は席上、一転して来年以降も朗読会を続ける決意を表明した。
 文芸フォーラムの仲間だった石上さんやメンバーの片瀬優子さん(70)が同団体を立ち上げたのは2011年。月2回集まり、劇団静芸の元俳優、長谷川哲夫さんの指導の下、各自の作品を朗読していたが、9回目の公演を終えた19年11月、長谷川さんが病気でこの世を去った。
 演出面で重要な存在だった長谷川さんの死に加え、新型コロナが感染拡大したことも影響し、公演は休止が続いた。石上さんは、自身の体調が優れないことやメンバーの高齢化も進んだことで、今回の公演を最後に朗読会の運営を終了することを考えていた。
 一方で、公演に向け準備を進める中、前向きに練習に取り組むメンバーの姿に心が揺らいだ。長谷川さんの後を継いで指導に当たるボイストレーナーのあべよしみさん(59)は「皆さん練習熱心で年齢を感じさせない」と舌を巻く。石上さんたちの公演に感銘を受けて仲間に加わったメンバーも。石上さんは、長谷川さんの思いをつなぐためにも、団体と朗読会を続けていくことを決意した。
 グループ名の由来となった宝石「ラピスラズリ」は幸運を招き、永遠に輝くようにという意味。公演の最後を「がんばれラピス!」のコールで締めくくった石上さんは「会場からパワーをもらった。90歳までやることを目標にしたい」と力強く語った。
 

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