清水カトリック教会 現地保存断念 築約90年の木造ゴシック様式 住民ら移築費用調達目指す

 築90年近く経過し、木造のゴシック様式が特徴の清水カトリック教会(静岡市清水区岡町)について、所有者のカトリック横浜司教区とこれまで現地保存を求めてきた地元住民、静岡市の3者が、解体して区内の別の場所へ移築することで合意したことが、10日までに分かった。住民や一部信徒らはクラウドファンディング(CF)で移築費用を集めるための団体を近く結成するという。

解体が決まった「カトリック清水教会」=2021年12月、静岡市清水区岡町
解体が決まった「カトリック清水教会」=2021年12月、静岡市清水区岡町

 同日までの取材に、3者が認めた。保存を求めてきた岡地区連合自治会の小林靖明会長によると、移築先候補の一つとして外国の大型客船が多く発着する日の出地区などが内部で挙がっているが、本格的な議論はこれからだという。小林会長は「フランス出身の神父が建設に奔走した教会は、海外の観光客も多数訪れる清水港のシンボルになるのでは」などと話した。
 横浜司教区によると、跡地には聖堂や信徒会館を新築する予定。同司教区の調査で、現在の清水カトリック教会は地震で倒壊する可能性が高いことが分かったため閉鎖していて、本来の教会の機能が果たせなくなっている。解体後に出る木材などは団体に無償提供する。同司教区の保久要事務局長は「10年以上、地元と保存についてコミュニケーションしてきた。1、2年のうちに新築したい」と話した。
 ただ、ネックとなるのは移築費用。CFでどの程度の金額が集まるかも不透明だ。土屋和男常葉大教授(建築史)は「お金と手間、時間はかかるが、どの程度正確に復元するかで変わる。十分移築の価値がある建物だ」と指摘した。

 清水カトリック教会 1935年に完成した木造平屋建て、一部2階建ての建物。二つの尖塔(せんとう)が特徴で、内部のステンドグラスの価値も高いとされる。太平洋戦争中は負傷者の救護所にもなった。地元で保存のための署名運動も行われ、過去には県指定文化財などに登録しようとする動きもあったが実現しなかったとされる。 

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