東海道五十三次「今歩きたい」 ALSの和田さん(埼玉)が静岡・府中宿入り

 体が徐々に動かなくなる筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患う埼玉県草加市の服飾雑貨デザイナー和田義治さん(51)が、東海道五十三次(約490キロ)の踏破に挑んでいる。14日には、東海道最大規模の宿場として栄えた府中宿(静岡市葵区)に到着した。「自分の挑戦が難病を患った人たちに勇気を与えられれば」。旅の記録を交流サイト(SNS)で発信しながら、一歩一歩を踏みしめる。

旧東海道府中宿上伝馬本陣、脇本陣跡を記念した石碑に見入る和田義治さん=14日午前、静岡市葵区
旧東海道府中宿上伝馬本陣、脇本陣跡を記念した石碑に見入る和田義治さん=14日午前、静岡市葵区

 「菜箸がうまく持てない」。利き手の左手に異変を感じたのは2018年の12月。その後、手の震えも現れ始めた。度重なる検査の末、21年10月にALSの病名を告げられた。「なぜ自分が」。1週間ほど深く落ち込み、電車に揺られながら涙をこぼした。
 家族らの励ましで病気を前向きに捉えられるようになった22年1月、テレビで東海道五十三次が紹介されていた。左手の握力は落ち、右手にも症状が出始めていたが、幸い両脚に症状はなかった。「いつか歩けなくなる。自分も今、歩きたい」と踏破を決めた。
 11月8日、東京・日本橋を出発。宿を手配しながら1日25キロ前後歩き、予定より快調なペースで進んでいる。12月7日の京都・三条大橋到着を目指す。
 友人から「発信すれば勇気をもらえる人もいるはず」と助言を受け、病状の説明に加え、行く先々の風景写真など旅の記録をインスタグラムで発信。出発を表明後、フォロワーは70人ほど増えて500人を超え、応援メッセージも届くようになった。「自分の行動で人の心が動いていることは幸せ」と話す。
 14日は静岡市葵区に入り、同区伝馬町の「府中宿上伝馬本陣、脇本陣跡」を記念した石碑を見て歴史に思いをはせた。疲労は蓄積しているが「応援に感動し、歩いて知る歴史や風景に心動かされた。道中で多くの人の温かさにも触れ、心が豊かになった」と充実した表情を見せる。
 道のりは、まだ半分以上が残る。「自分は人生を投げやりになってはいない。自由に東海道五十三次を歩き、掲げた目標を達成したい」と歩みを進める。

 <メモ>筋萎縮性側索硬化症(ALS) 手足や呼吸に必要な筋肉が徐々に痩せ、力が弱くなっていく国指定難病。現在は国内に約1万人の患者がいるとされる。進行すると人工呼吸器が必要になる患者も多く、会話や食べ物の飲み込み、歩行なども困難になるが、進行の早さは患者により異なる。発症から2~5年ほどで死に至る例が多く、明確な治療法は見つかっていない。

 

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