静岡県内いじめ増 交信で誤解招きやすく 小中生の情報モラル教育急務

 2020年度以降、小中学校や高校で実施された新学習指導要領は情報活用能力を「学習の基盤」と位置付ける。新型コロナウイルス禍によるオンライン教育の後押しもあって子どもたちが学校や自宅で端末を活用する場面が増えた。静岡県内では21年度、「パソコンや携帯電話で中傷された」といういじめの件数は小中学校とも前年度の倍を超え、情報モラル教育は急務になっている。

健康に悪影響を与えないためにできることを話し合う児童ら=11月上旬、静岡市葵区の松野小
健康に悪影響を与えないためにできることを話し合う児童ら=11月上旬、静岡市葵区の松野小
自分と相手とのちがい
自分と相手とのちがい
健康に悪影響を与えないためにできることを話し合う児童ら=11月上旬、静岡市葵区の松野小
自分と相手とのちがい


 言葉の伝え方
 静岡大教育学部の塩田真吾准教授(教育工学)はLINEみらい財団と共同で情報モラル教材「GIGAワークブック」を作成した。県内をはじめ全国約30の市町で導入や検討を進めていて、児童生徒の各端末に配置し、授業で活用する自治体もある。防犯への配慮など利用の基本を盛り込む中で、SNSを介したコミュニケーションでのトラブル防止を狙う項目が目立つ。文字だけのやりとりは対面よりも誤解を招きやすい、というネット特性を子どもに知らせるためだ。
 「あなたが、クラスの友だちから言われて『いやだな』と感じる言葉を一つ選んでみましょう」という問いに①まじめだね②おとなしいね③一生懸命だね④個性的だね⑤マイペースだね―と、五つの選択肢が示されている。どれも発する相手やその場の状況、自分の気分次第で「称賛」にも「嫌み」にも受け止められる言葉ばかりだ。ほかにも「SNSをする際に嫌だと思う順に並べよう」として①すぐ返信が来ない②会話が終わらない③知らないところで自分の話題が出る―など五つの選択肢の欄も。個人によって判断が分かれそうな問いを多く記載している。
 児童生徒は答えを比べながら、意識する言葉や行為が一致しないことを体験する。画面の文字で伝える言葉は口調や表情が伝わる対面よりも悪く感じられることがあることが分かると、言葉の伝え方や受け止め方も工夫できる。
 10月末に公開された不登校やいじめに関する文部科学省調査の本県分によると、公立小中学校が21年度に認知したいじめの態様で「端末を使った中傷」は小学校251件(前年比2・18倍)、中学校468件(同2・08倍)と大きく増加した。塩田准教授は「学校で相手の嫌なことをしない、と漠然と呼びかけても不十分だ。嫌なことが何かが人によって違う前提で、互いが嫌な気持ちにならないためにどうすべきか考えるよう、指導を求めたい」と話す。

 健康への影響
 静岡市葵区の松野小では11月上旬、健康への意識を高める狙いの授業が行われた。全校児童が参加し、自身の端末利用時間や就寝時刻などをチェックして、自分の生活の改善点を考えた。元小学校長の豊泉行男さんが講演し、「スマートフォンやゲームを使う時間の一部を簡単な運動や読書に置き換えてみては」などと提案した。
 参観した保護者によるグループワークでは「宿題が終わってからという約束で、午後9時から深夜まで使ってしまう」「学びにつながる動画もあり、ただ見るのをやめなさいとも言えない」などの悩みも寄せられた。
 

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