災害の不安、映画で共有 「すずめの戸締まり」新海誠監督に聞く

 大ヒットアニメ映画「君の名は。」「天気の子」を手がけた新海誠監督の3年ぶりの新作「すずめの戸締まり」が、静岡県内で公開中だ。前作までの2作品に続き、根底には「災害」というテーマがある。静岡市駿河区で取材に応じた新海監督は「今、本当に不安に思っていることを映画の中で一緒に考えられたらいい」と語った。

「明日が今日と同じか分からない感覚がある」と語る新海誠監督=静岡市駿河区(写真部・杉山英一)
「明日が今日と同じか分からない感覚がある」と語る新海誠監督=静岡市駿河区(写真部・杉山英一)
「すずめの戸締まり」より((c)2022「すずめの戸締まり」製作委員会)
「すずめの戸締まり」より((c)2022「すずめの戸締まり」製作委員会)
「明日が今日と同じか分からない感覚がある」と語る新海誠監督=静岡市駿河区(写真部・杉山英一)
「すずめの戸締まり」より((c)2022「すずめの戸締まり」製作委員会)

 主人公は九州で叔母と2人で暮らす高校生、鈴芽[すずめ]。地震などの災いを招く扉に鍵を掛ける「閉じ師」の青年、草太[そうた]と出会うが、彼は謎の猫によって小さな椅子に姿を変えられてしまう。鈴芽は草太を助け、各地にある扉を閉めるため全国を巡る。2人の周囲を巻き込みながらストーリーは進む。新海作品ならではの美しく詳細な背景描写は健在だ。
 20代で阪神・淡路大震災、30代で東日本大震災を経験した新海監督。「人生が書き換えられてしまう衝撃。日本社会そのものが書き換わったと思うんです。どうすればよかったのか、この先どうすればいいのか、という気持ちは、10年以上たってもある」。そんな思いが、隕石[いんせき]落下を描く「君の名は。」(2016年)、都市が水没する「天気の子」(19年)、そして今作につながった。
 今回の企画が始まった20年初め、社会が直面したのは新型コロナウイルス禍だった。「人生を左右する地震災害が『一つ昔の出来事』として押し出されてしまう」。そんな危機感が、逆に「自分の映画の中で扱うべきこと」を明確にしたという。
 1973年、長野県出身。「映画やアニメの仕事をしている人は周囲におらず、自分が作るなんて想像もしなかった」。それでも宮崎駿監督のアニメ作品をビデオテープがすり切れるまで見た。「こま送りを繰り返して『絵の連続でこう見えるんだ』と理解した経験が、今の仕事に結び付いている」と話す。
 2年半をかけた仕事が一段落したばかり。「公開後、こんなに不安で気持ちが不安定なのは初めて。きちんと届くんだろうか、という思いが大きい。まだ次のことは考えられない」
 

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