クラフトジン、静岡仕込みで 静大発ベンチャー始動 必須原料ジュニパーベリー植え付け

 静岡大発のベンチャー「葵GIN(ジン)クラフトテクノロジー」(静岡市駿河区)が、クラフトジンの製造・販売を来春にも始める。地元の農産物を使用する特色あるジンやリキュールを同市内で生産し、地域活性化につなげる考え。同社関係者や学生が8日、ジンの必須原料である「ジュニパーベリー」の苗木を同区の畑に植え付け、計画を始動させた。

ジュニパーベリーの苗木を植え付ける学生ら。数年後の実の活用を見据える=8日午前、静岡市駿河区
ジュニパーベリーの苗木を植え付ける学生ら。数年後の実の活用を見据える=8日午前、静岡市駿河区

 ジンは穀物を主な原料とする蒸留酒。37・5度以上のアルコールにジュニパーベリーの果実を加え、さらに風味付けの材料「ボタニカル」を加えて造る。
 「土壌、気候、空気といった土地の特性をジンに落とし込みたい」。代表取締役CEO(最高経営責任者)の一家崇志静岡大准教授(42)はそう話す。同社が掲げるのは「オール静岡」。ボタニカルとしてワサビ、茶、キンカンなど地場の農産物を活用する。
 現状は輸入するしかないジュニパーベリーの栽培にも挑戦する。植えた木が実を付けるのは数年後だが、一家准教授は「耕作放棄地や中山間地を活用して栽培を広げていきたい。取り組みが地域課題の解決につながれば」と話す。
 同社は静岡大農学部の研究者・学生、市内の飲食店や旅館の経営者らが11月に設立。年内に小型蒸留器を静岡大に設置し、商品のテスト開発を進める。来夏までにJR静岡駅近くの店舗などに大型蒸留器を設置し、量産態勢を整える計画だ。
 オリジナル商品のほか、飲食店などからの受託生産もする。当初はジンとリキュールを合わせて年間1万1千本の売り上げを目指す。
 海外輸出も視野に入れる。一家准教授は「海外では和食への関心が高まっている。『静岡』をアピールするチャンス」と意気込む。

 ■科学的手法で「狙った味に効率良く」
 世界四大スピリッツ(蒸留酒)の一つに数えられ、親しまれているジン。比較的簡素な蒸留設備で短期間で造れるため、国内メーカーが増えている。県内でも沼津蒸留所(沼津市)が2020年に稼働している。
 「葵GINクラフトテクノロジー」は、大学発ベンチャーの利点を生かし、データサイエンスを取り入れるのが特徴。国内・海外のジンを機器で分析し成分データを数値化するなど、製造過程に科学的手法を用いる。「効率良く狙った味にする。オリジナルと言い切れるものを造っていく」(一家准教授)という。

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