平日の部活動改革、受け皿づくり活発化 沼津市内でクラブ・団体設立の動き

 沼津市の市立中学校は2023年度から、平日の部活動を週3日間、午後5時までとする取り組みを始める。国は25年度までに、少子化や教員の負担軽減を目的に休日の部活動を地域に移行する方向性を示していて、同市は先行的に平日の部活動改革にも乗り出す。学校側に呼応して、市内では今後の生徒の受け皿となるクラブや団体の設立の動きが活発化している。

部活動の地域移行に向け、来春から指導する中学軟式チームについて保護者に説明する内村義則代表(右)=11月中旬、沼津市立沢田小
部活動の地域移行に向け、来春から指導する中学軟式チームについて保護者に説明する内村義則代表(右)=11月中旬、沼津市立沢田小

 11月中旬、沼津市の沢田小で開かれた学童野球9チームの合同練習会に、23年春の始動を目指す沼津中学軟式野球クラブ「沼津フェニックス」の内村義則代表の姿があった。内村代表が練習会を訪れた保護者に、新たなクラブの参加者募集のチラシを手渡すと、保護者からは活動時間や費用を問う質問が相次いだ。
 同クラブは同市今沢地区を拠点にし、本年度で教員を定年退職する内村代表や地域の教員OBらが指導する。24年度からは中体連の大会にも参加する計画だ。市内には18の中学校があるが、野球部があるのは14校。そのうち半数の7校は他校との合同チームで、チーム数は10となっている。内村代表は「少子化で部活動が減る中、本格的に野球をやりたい子どもたちは学校外の硬式チームに進んでいく」とし、「軟式で仲間と野球を楽しみたいという生徒の場所を確保しなければ」と危機感を募らせる。
 学童野球チームの関係者も期待を寄せる。沼津ヒーローズの佐々木裕哉監督(34)は「中学校の部活動は、顧問の先生が異動すると、活動内容ががらりと変わってしまう。生徒の考え方はさまざまで、選択肢が増えるのはいい」と歓迎する。
 市内ではその他、アスルクラロスポーツクラブが、地域の指導者発掘を兼ね、サッカーや女子バレーボールの指導を始めた。文化系部活動でも、中学生の吹奏楽団「沼津ブラス・フィールド」が活動をスタートさせている。同市出身でサッカーJリーグ横浜FCの長谷川竜也選手が代表を務めるサッカースクール「THFA」も、来春に中学生チームの発足を目指している。

教員8割「指導が負担」 保護者は「送迎」不安視 photo02 沼津市の部活動に関するアンケート
 沼津市と市教委は今年7月、教員と生徒、その保護者を対象に部活動に関するアンケートを実施した。結果からは、多くの教員が競技の指導者資格がなく、指導を負担に感じている現状が浮き彫りになった。一方、保護者は部活動の地域移行後に生徒の送迎や活動費用で不安を感じていることが分かった。
 アンケートは校長と教員、中学1、2年生、その保護者計3176人が回答した。教員を対象にしたアンケートでは、9割が顧問を担当する競技の指導者資格、7割が審判資格もなく、指導に関して65%が「あまり自信はない」「まったく自信がない」と答えた。また、「かなり」「少し」を合わせて8割が指導を負担と感じていた。
 部活動の時間については、生徒、保護者ともに4~6割程度が、平日も、休日も現状に不満はないとした。また、保護者は地域移行後の部活動について、6割が送迎、4割近くが費用に不安を抱え、その費用は7割が月3000円未満を望んだ。

沼津市教育長 奥村篤氏 高校との一体議論必要 photo02 部活動の地域移行について語る奥村篤教育長=沼津市内
 平日の中学校部活動の改革を進める沼津市の奥村篤教育長に、地域への部活動移行の考え方や課題を聞いた。
 ―平日の部活動の活動指針について、学校現場の反応や地域への説明は。
 「2018年に市教委独自で『部活動指導は月32時間以内』とするガイドラインを策定した際は、指導時間が減る現場の反発は大きかった。今回は教育課程を見直し、活動日には少なくとも100分程度の活動時間を確保できる見通しが立ち、一定の理解は得られると感じる。地域移行した際に、受け皿となる自治会へは11月から校区単位で懇談会を順次開いている。生徒や保護者には来年早々にも説明会を開き、周知を図る」
 ―高校進学時の部活動を見据える中で、中学での活動時間の減少を不安視する生徒や保護者もいる。どのように考えているか。
 「中学校の部活動は高校入試に影響する部分が現状としてある。公立高には学校裁量枠、私立高では特待生制度などがあり、中学の部活動がしっかりと評価されるかを不安に感じる生徒や保護者は当然いるだろう。国は中学校の地域移行を先行して方針を示しているが、高校の部活動の方針は具体化していない。中高で同じ種目を続ける生徒は多く、本来は一体的に議論がなされるべきだ」
 ―完全地域移行後は、指導者の確保が課題となる。対策や考え方は。
 「指導者の絶対数には限りがある。その中で2割の教員が移行後も指導者として関わりたいと考えているのはありがたい。さらにコミュニティースクールの仕組みを活用し、地域の指導者発掘支援もしていく。ただ、指導以外にも大会については、運営を教員が担うケースが多い。何らかの形で当面は教員が関わらざるを得ない現状は課題として残る。また、地域移行後に教員が指導者となる場合、『兼業』として報酬を認めるか、市としての金銭的支援の可否や保護者も含めた支援の方法は早急に検討を進める必要がある」
 ―教員の負担を地域に押しつけているとの批判もあるが。
 「教員の負担軽減という側面が注目されるが、私が若手教諭だった時代に比べ、負担が増大しているのは明らか。教員という仕事が避けられ、採用試験の倍率も低くなりつつあり、質の確保も懸念される。教員の『余裕』を増やすことで、子どもたちの細かな言動や、悩む教員により気づける態勢をつくり、全体として地域の子どもたちの笑顔につなげたい」

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞