静岡市 台風15号で床上浸水/リビング壁に無数の穴 不自由な生活、依然続く【追跡2022①】

 ロシアによるウクライナ侵攻など国際情勢が揺れ動いた2022年が間もなく終わる。静岡県内では牧之原市の認定こども園の送迎バスに園児=当時(3)=が置き去りにされ死亡し、台風15号で県民が被災するなど事件や災害が頻発。熱海市の大規模土石流を巡り遺族らが市と県に損害賠償を求めて提訴し、「人災」の責任追及は新たな局面を迎えた。

断熱材の乾燥のため自宅リビングの壁に開けた穴を見る土肥牧子さん=静岡市葵区瀬名川
断熱材の乾燥のため自宅リビングの壁に開けた穴を見る土肥牧子さん=静岡市葵区瀬名川

 「時間がたち、お金のことなどを考えると気分が沈みます」。12月中旬、静岡市葵区瀬名川の会社員土肥牧子さん(38)。断熱材の乾燥のため床が取り払われ、壁に無数の穴が開いた自宅1階のリビングで苦しそうに顔をゆがめた。
 2017年に新築した木造2階建てのマイホーム。付近を流れる巴川の氾濫などで、床上の足首の高さまで水に漬かった。夫(37)と2人の娘たちと2階で寝起きしてきたが、工事のため12月中旬から2カ月間、市営住宅に移る。クリスマスや新年は自宅で迎えられない。
 いつもは前向きの夫も、被災から1週間は顔色が悪く「倒れるのでは」と心配した。自身も精神的に不調を来し、休職中だ。新型コロナウイルスの感染拡大に加え、被災で市内の心療内科のある病院は予約が取りづらい状況が続いている。
 土肥さんは「住宅ローンはあと数千万円残っている。手放したくても買い手が現れるか分からず、売ることもできない。住み続けるしかないのでは」とジレンマを吐露する。
 出身地の沖縄では大型の台風が頻繁に上陸したものの、河川氾濫は経験したことがなかった。「とにかく川をどうにかしてほしい」と訴える。
 台風15号による静岡市内の24時間雨量は416・5ミリ。1974年の七夕豪雨の記録とされる508ミリに迫った。静岡市によると、約4400棟が床上浸水し、いまも100世帯以上が避難生活を送っているとみられる。
 巴川を管理する県は麻機遊水地の整備や河床の掘削など、10年に1回の災害に耐える整備を当初計画より10年遅らせて2040年までに完了させるとするが、「もっと急いで」との声も聞かれる。

 <メモ>9月23日夜から猛威を振るった台風15号により、県内では死者3人、住宅の床上浸水は5782棟(12日現在)に上った。静岡市清水区では巴川の氾濫による浸水被害に加え、完全復旧まで12日間を要した断水で最大約7万4000世帯が影響を受けた。

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